2008 Fiscal Year Annual Research Report
内生放線菌を用いた生物防除の新展開~アブラナ科野菜セル苗黒すす病の防除機構の解明
Project/Area Number |
20780033
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
清水 将文 Mie University, 大学院・生物資源学研究科, 助教 (60378320)
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Keywords | 内生放線菌 / 生物防除 / キャベツセル成型苗 / 黒すす病 / 菌寄生 / Streptomyces / Alfernaria / 細胞壁分解酵素 |
Research Abstract |
本研究の最終目的は、キャベツセル成型苗黒すす病に高い防除活性を示す内生放線菌MBCN152-1株の防除機構を解析し、本菌株の実用化に結び付ける基礎データを得ることである。そこでまず、光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてMBCN152-1株のキャベツ苗内(外)での増殖・移行性を解析した。その結果、本菌株は、種子処理1週間以内には胚軸を経由して子葉にまで移行し、表層のクチクラ層内に侵入し増殖することがわかった。さらに、本菌株はセルラーゼやキシラナーゼ、エステラーゼを分泌することも明らかとなった。これらの結果より、本菌株は分解酵素で苗の細胞壁成分を分解・利用して増殖すると考えられた。つぎに、MBCN152-1株の黒すす病菌への寄生行動を解析するため、素寒天上で本菌株胞子と黒すす病菌胞子を共培養し、カルコフロールホワイト染色して蛍光顕微鏡観察した。その結果、MBCN152-1株は接種72時間後までには黒すす病菌の発芽管や菌糸に付着し、細胞壁を分解し始めることが明らかとなった。また、本菌株は培地上で微量のキチナーゼを分泌するが、黒すす病菌との共培養時にはその分泌量が著しく増加することを確認した。しかし、他のAlfernaria属菌には寄生せず、キチナーゼ分泌も誘導されなかった。これらの結果は、MBCN152-1株が黒すす病菌と他のAlfernaria属菌とを識別し、黒すす病菌に特異的に寄生することを示唆しており、極めて興味深い新知見である。MBCN152-1株定着苗に接種した黒すす病菌をSEM観察したところ、素寒天上と同様に本菌株に激しく寄生されていたことから、本菌株の黒すす病防除機構には菌寄生が関与することが明らかとなった。このような内生放線菌による菌寄生に関する報告は世界的にも例がなく、植物病理学的・微生物学的にも意義ある重要な新知見である。
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