2009 Fiscal Year Annual Research Report
内生放線菌を用いた生物防除の新展開~アブラナ科野菜セル苗黒すす病の防除機構の解明
Project/Area Number |
20780033
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
清水 将文 Mie University, 大学院・生物資源学研究科, 助教 (60378320)
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Keywords | 放線菌 / 生物防除 / 菌寄生 / キャベツ / セル成型苗 / 黒すす病 / 植物内生 / Streptomyces |
Research Abstract |
内生放線菌Streptomyces sp. MBCN152-1株のキャベツ苗上および内部での定着様式を走査型電子顕微鏡で観察した。その結果,本菌株は主に葉表面のクチクラ層で増殖し,そのうちの幾つかの菌糸が層下の細胞間隙に侵入し,定着することが明らかとなった。また,気孔からは侵入しないこともわかった。MBCN152-1株をキャベツ黒すす病菌,キャベツ黒斑病菌,アブラナ科炭疽病菌,イチゴ炭疽病菌と寒天培地上で共培養したところ,黒すす病菌以外の病原菌には寄生しなかった。透過型電子顕微鏡観察により,MBCN152-1株は黒すす病菌の菌糸細胞壁に侵入することが明らかとなった。MBCN152-1株の防除効果を接種試験で検定した結果,黒すす病とイチゴ炭疽病には防除効果を示したが,キャベツ黒斑病とアブラナ科炭疽病の発病は抑制しなかった。さらに,細菌性病害であるイネ苗立枯細菌病にも顕著な防除効果を示した。MBCN152-1株は抗菌物質を生産しないことから,本菌株の病害防除機構には,菌寄生に加えて抵抗性誘導も関与していると予想された。そこで,MBCN152-1株定着キャベツ苗に黒すす病菌を接種し,苗の細胞レベルでの抵抗反応を光学・蛍光顕微鏡で観察したが,カロース蓄積やパピラ形成などは全く確認できなかった。従って,本菌株が誘導する抵抗性反応には,例えばディフェンシンやキチナーゼなどの抗菌性物質の蓄積が関与しているものと推測された。 以上の研究から,内生放線菌の植物体への定着様式,菌寄生行動,病害防除機構に関する新たな知見が得られた。これらは,内生放線菌を活用した生物防除技術の実用化に資する重要な知見である。
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Research Products
(3 results)