2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20780049
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
天知 誠吾 Chiba University, 大学院・園芸学研究科, 准教授 (80323393)
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Keywords | ヨウ素 / 微生物 / Real-time PCR / 揮発性ヨウ素 / マルチ銅オキシダーゼ / ラッカーゼ |
Research Abstract |
昨年度確立したReal-time PCRの最適条件を用いて、各地から採取した海水中のヨウ素酸化細菌(IOB-1、IOB-2)の存在量を定量した。海水は宮城県石巻市女川湾沖合のコンブ養殖場、神奈川県藤沢市江ノ島近辺(鵜沼海岸、由比ヶ浜、七里ヶ浜、腰越)、岩手県宮古市浄土ヶ浜などから採取した。その結果、ほとんどの試料でIOB-2は検出限界以下であったが、IOB-1は0.01~1.18%存在した。このことからヨウ素酸化細菌、特にIOB-1は海水中に普遍的に分布することが分子生態学的にも明らかになった。一方、実施したサンプリング期間においては、ヨウ素酸化細菌の存在量に地域差や季節変動は特に認められなかった。コンブ群落は揮発性ヨウ素の発生源としてよく知られているが、このような環境においてもヨウ素酸化細菌の存在量はその他の海洋環境と大差がないことがわかった。 Q1株のヨウ素酸化酵素(IOE)遺伝子を取得するため、IOEのN末端配列から設計したプライマー(NF1,NF2)及びマルチ銅オキシダーゼの銅結合領域から設計したプライマー(AR1,AR2,BR1,BR2,BR3,BR4)を用いてPCRを行ったが、目的の配列を増幅することはできなかった。現在次世代シーケンサー(illumina)を用いてQ1株の全ゲノム配列を決定している。IOEの生化学的特質をさらに詳細に明らかにするため、これら実験と並行してIQEの精製を再度行った。陰イオン交換クロマトグラフィを省略し、培養上清の限外濾過、Native-PAGE、ゲルからの溶出回収の3ステップでの精製が可能となった。IOEはNative-PAGE、IEF-PAGE、分子量測定用のゲル濾過クロマトグラフィでは単一タンパクと同様の挙動を示したが、SDS-PAGEでは125、155KDaの2本のバンドとして現れた。またヨウ素イオン以外に、種々のメトキシフェノールやジフェノールにも酸化活性を示した。IOEの生合成は銅依存的であり、スペクトル解析では銅に特異的な吸収が見いだされた。ヨウ素に対するk_<cat>/K_m値は5.3×10^5(min^<-1>M^<-1>)で、既に報告のある糸状菌T.multicolorやM.thermophilaのラッカーゼよりも400~53,000倍高い値を示した。
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