2008 Fiscal Year Annual Research Report
緑膿菌リポ蛋白質の選択的局在化を支える分子機構の解析
Project/Area Number |
20780050
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
成田 新一郎 The University of Tokyo, 分子細胞生物学研究所, 助教 (30338751)
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Keywords | 緑膿菌 / 薬剤耐性 / リポ蛋白質 |
Research Abstract |
細菌のリポ蛋白質はN末端のCysが脂質で修飾された蛋白質であり、脂質部分を介して膜に結合している。グラム陰性細菌においてリポ蛋白質は内膜または外膜に結合しており、多様な生命現象に関与している。緑濃菌においてリポ蛋白質が内膜に留まるか外膜に輸送されるかは、N末端から3番目(+3位)と4番目(+4位)の残基にって規定されており、このシグナルの認識にはLolCDE複合体が関与していることがわかっている。本研究は緑濃菌リポ蛋白質の膜局在性を規定するシグナルの物理化学的性質を解明するとともに、LolCDEが外膜リポ蛋白質を選択的に認識、あるいは内膜リポ蛋白質を排除する機構を明らかにすることを目的としている。 緑膿菌のリポ蛋白質であるMexAが内膜に局在するとMexAB-OprM多剤排出ポンプが機能を発揮するのに対し、MexAが外膜に局在すると排出ポンプは機能しない。これを利用して、+3位、+4位をランダムに置換したMexA変異体をコードするプラスミドライブラリーを構築して緑膿菌に導入し、抗生物質に対して耐性となったコロニーを選択することにより、リポ蛋白質の内膜局在化シグナルのスクリーニングを行った。選択した187個のプラスミドの塩基配列から+3, 4位の残基を決定したところ、これらの中には94通りのアミノ酸配列が含まれていた。+3位ではLys、Gluなど親水性の高い残基が比較的多かったのに対し、+4位ではSer、Thrなど中性アミノ酸が多く見られた。一方でCys及びTrpを+3位に持つ変異体やPheを+4位に持つ変異体は分離されなかった。これらの結果から、緑膿菌リポ蛋白質を内膜に局在化させる残基の組合せは多様であること、+3位と+4位のアミノ酸残基に優位性はなく、残基の組み合わせが重要であることがわかった。本研究により緑膿菌におけるリポ蛋白質の局在化シグナルの全体像が明らかになったことから、多くの機能未知のリポ蛋白質についても局在性を予測することが可能になった。
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