2009 Fiscal Year Annual Research Report
緑膿菌リポ蛋白質の選択的局在化を支える分子機構の解析
Project/Area Number |
20780050
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
成田 新一郎 京都大学, ウイルス研究所, 特定助教 (30338751)
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Keywords | 細菌 / 蛋白質 / リポ蛋白質 / 緑膿菌 / 局在化シグナル |
Research Abstract |
リポ蛋白質はグラム陰性細菌では内膜と外膜に存在している。緑膿菌ではリポ蛋白質の+3位と+4位の残基が膜局在性を規定していることが明らかになっているが、緑膿菌では内膜リポ蛋白質、外膜リポ蛋白質のいずれの+3位、+4位にも保存された残基は存在しない。緑膿菌リポ蛋白質MexAの内膜局在がMexAB-OprM多剤排出ポンプの機能に必須であることを利用して、+3位、+4位をランダムに置換したMexA変異体をコードするプラスミドライブラリーを構築して緑膿菌に導入し、薬剤耐性となった形質転換体を192個分離した。塩基配列を決定した結果、これらの中には94通りのアミノ酸配列が含まれていた。+3位ではLys、Gluなど親水性の高い残基が比較的多かったのに対し、+4位ではSer、Thrが多く見られた。+3位のLysと+4位のSerに着目して、系統的な解析を行ったところ、+3位がLysのとき、+4位を20種類のアミノ酸に置換したMexA変異体の中では、+4位にCysを持つ変異体でのみ薬剤耐性の低下が見られた。一方、+4位がSerである場合は、+3位にCysまたはTrpを持つMexA変異体の薬剤耐性が低下していた。細胞を分画してこれらのMexA変異体の膜局在性を決定したところ、Lys-CysおよびCys-Ser配列を持つMexA変異体は内膜に、Trip-Ser配列を持つMexA変異体はは外膜に局在していた。+3位または+4位にCysを持つ変異体はMexA分子間でジスルフィド結合を形成するために薬剤排出ポンプの活性が低下したと考えられる。一方、+3位のTrpは単独で外膜シグナルとして機能することが明らかとなった。また、外膜リポ蛋白質OprMの+3位、+4位を内膜局在化シグナルであるLys-Serに置換したところ、この変異体の薬剤耐性の低下は僅かであった。OprMは外膜でβ-バレル構造をとることが知られており、OprMの外膜局在化が+3位、+4位残基よりも蛋白質部分の性質に依存していることが示唆された。
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