2009 Fiscal Year Annual Research Report
種子形成における胚乳分化・糖代謝を制御するリン酸化タンパク質の機能解析
Project/Area Number |
20780069
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
濱田 茂樹 National Agricultural Research Organization, 作物研究所米品質研究チーム, 任期付研究員 (90418608)
|
Keywords | リン酸化タンパク質 / プロテインキナーゼ / デンプン生合成 / Nucleooside diphosphate kinase 1 |
Research Abstract |
本研究では,イネ登熟種子において、胚乳分化およびデンプン生合成を含む糖代謝に関わるリン酸化タンパク質を同定・解析することを目的とした.今年度は、新たにプロテインキナーゼ(リン酸化酵素)の同定も試みたが、その存在量が極微量のためかプロテオーム解析やアフィニティーカラムクロマトグラフィーでの同定には至らなかった。一方で、昨年度の研究成果の中で明らかにしたリン酸化タンパク質候補の中からNucleooside diphosphate kinase 1(NDPK1)に注目し解析を進めた。本酵素は、デンプン生合成量を制御するADP-glucose pyrophosphorylase(AGPase)の基質となるATP量をコントロールすると考えられ、まさに目的に合致したタンパク質と判断した。本研究によって初めて、リン酸化タンパク質であることが明らかとされた。ゲノム情報からNDPKには3種の遺伝子が存在するが(NDPK1~3)これらアイソザイムのGFP融合タンパク質の細胞内局在性を解析したところ、NDPK1は細胞質、NDPK2および3はプラスチドに存在することを明らかにした。イネ胚乳では細胞質型AGPaseの活性がデンプン生合成に極めて重要であることから、同定したNDPK1が細胞質においてAGPaseと協調的に機能していることが考えられた。また、ノーザンブロット解析の結果から、NDPK1はスクロース誘導性であることを明らかにし、種子中で転流シグナルによって発現し、糖代謝を制御することが示唆された。デンプン生合成の調節因子はまだまだ不明な点が多く、今回の結果はデンプン生合成量の制御機構解明に新たな展開を与えるものである。現在、有望なリン酸化タンパク質については、欠損変異体等の作製を進めているところである。今後、更に生体内での機能が明らかにされていくものと期待している。
|