2009 Fiscal Year Annual Research Report
光合成に現れるストレス後遺症とその原因を評価するゲノム生物学的手法の開発
Project/Area Number |
20780108
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
斎藤 秀之 Hokkaido University, 大学院・農学研究院, 助教 (70312395)
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Keywords | ストレス診断 / ブナ / ゲノム生態学 / 光合成 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
林木の光合成のストレスを診断できる指標性遺伝子とその発現パターンを明らかにする研究の一環として、本研究は、ブナ樹冠の葉を対象に、乾燥、高温(34℃)、酸(H_2O_2)の3つのストレスに対する遺伝子の発現パターンを調べて、ストレス診断技術に有用なストレス特異的な遺伝子発現パターンについて検討した。 乾燥に対して特異的に発現量を増やす遺伝子として、光合成関連のタンパク質(集光性クロロフィルa/b結合タンパク質)をコードするcab様遺伝子と活性酸素除去系の酵素(アスコルビン酸ペルオキシダーゼ)をコードするAPX様遺伝子を明らかにした。高温に対して特異的に発現量を増やす遺伝子として、植物ホルモンであるエチレンの合成系のACO様遺伝子とACS様遺伝子、植物ホルモンであるアブシジン酸の分解系で量的制御の酵素をコードするNCED2様遺伝子、糖からエネルギーを生成する解糖系に関わる主要タンパク質をコードするGAPDH様遺伝子、チューブリンαの1分子種であるTUA2様遺伝子などを明らかにした。酸に対して発現量を増やす遺伝子は、アブシジン酸合成系のCYP707A2様遺伝子などが認められたが、酸に特異的に発現量を増やす遺伝子を明らかにすることはできなかった。以上の通り、植物ホルモンなど生理機能量と関連の深い遺伝子群の発現パターンはストレス誘導性が高くて生理機能との関係も明確なため、これらの遺伝子発現パターンの組み合わせによって葉のストレス状態の診断指標として有効に活用できる可能性が示された。一方でストレスの原因との関係では単一ストレスとの特異性が低く、より多くの遺伝子の発現パターンの組み合わせを検討する必要が示唆された。 これらをまとめると、遺伝子発現パターンを指標にしたストレス診断の技術を開発できる見通しが得られた。
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Research Products
(1 results)