2009 Fiscal Year Annual Research Report
日本の地質条件が森林生態系の生物地球化学プロセスに与える影響
Project/Area Number |
20780115
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡邉 哲弘 Kyoto University, 地球環境学堂, 助教 (60456902)
|
Keywords | 土壌鉱物 / 地質 / 生物地球化学 / 森林生態系 |
Research Abstract |
本年度は土壌におけるリン酸の吸脱着および超塩基性岩を母材とする土壌の生成について研究を行った。また昨年度の成果とあわせ、森林生態系において地質条件が生物地球化学プロセスに与える影響についてまとめた。 植物の主要必須元素であるリン酸の土壌における吸脱着に関して、これまで吸着容量が土壌中の活性Al・Fe(酸性シュウ酸塩抽出Al・Fe)量に規定されていることが示されている。本研究では土壌からのリン酸の脱着しやすさに関して実験を行い、活性Al・Fe含量の高い土壌ほど微小孔隙に富み、より高い割合でその微小孔隙内部にリン酸を保持することで、リン酸の可動度を減じていることを示した。 超塩基性岩である蛇紋岩から生成した土壌について、粘土鉱物組成、交換性陽イオン、可給態Cr・Niの解析を行った。通常の火成岩・堆積岩母材土壌とは大きく異なり、蛇紋岩母材土壌は緑泥石、滑石、蛇紋石に富むため陽イオン交換の活性が低いこと、交換性Ca/Mg比が低いこと、可給態のCr, Niが大きいことを示した。 本研究を通して、地質条件が生物地球化学プロセスに与える影響として下記のことが解明された。日本の湿潤な気候条件下では雲母は熱力学的に不安定であり、バーミキュライトへと変質する。その量は母材中の雲母の量を反映し、頁岩等の堆積岩>酸性岩>塩基性岩・超塩基性岩母材土壌であった。このバーミキュライトは陽イオン交換の主体として土壌中で働く。また、活性Al・Feに関して、その量は火山灰土壌で極めて多く、また高標高の土壌やポドゾル下層土壌など有機物含量が高い土壌で多い傾向があった。それらを除くと、活性Alは粘土含量と正の相関があり、塩基性岩≒頁岩等の堆積岩>酸性岩母材土壌となった。これら活性Al・Feは有機物と結合することでそれを蓄積し、酸負荷に対して溶解することで応答し、リン酸の吸着容量および吸着強度を大きくしていた。
|
Research Products
(4 results)