2008 Fiscal Year Annual Research Report
森林生態系における細根生産量と養分吸収能が窒素動態に及ぼす影響
Project/Area Number |
20780116
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福澤 加里部 Kyoto University, フィールド科学教育研究センター, 教務補佐員 (10456824)
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Keywords | 冷温帯林 / 細根動態 / 林床植生 / ミズナラ / ササ / 根呼吸 / 硝酸還元酵素活性 |
Research Abstract |
本研究は森林の物質循環において重要な役割を果たすと考えられる植物の細根(直径<2mm)の動態と機能を評価することを目的とした。多様な植生が生育する森林生態系の根圏は複雑系であり、細根の機能を理解するためにはグループごとの細根動態パターンや機能を評価する必要がある。本研究では、樹木だけでなく冷温帯林において密生する林床植生の細根の動態や機能に注目した。 1年目にはミズナラ(樹木)とクマザサ(林床植生)を用いた栽培実験を行い、両者の細根動態パターンや窒素吸収能を比較した。細根動態観測のために、それぞれ別の根箱で栽培し細根生産の時間変化を観測した。細根生産の観測は、毎週または2週間ごとに根箱の側面をスキャナーで撮影し、画像上で個々の根の長さを測定することによった。このように非破壊的に観測することにより、生産と枯死・消失が同時に起こっている細根の動態パターンを正しく評価することができ、さらに細根が入れ替わる速度や一年間につくられた細根量を評価することができる。また、窒素吸収能評価のために、根と葉の硝酸還元酵素活性を測定し、根の呼吸活性を評価するために根呼吸速度を測定した。その結果、ミズナラの細根生産は6月から8月下旬まで高く、9月以降は低下した。ミズナラの根呼吸量は細根生産の季節変化と同調し、地温上昇に伴い指数関数的に上昇した。このことから地温が細根生産や呼吸活性に影響を及ぼす要因であることが示唆された。一方、クマザサの細根生産速度は6〜7月までと、9〜10月に高かった。ササの新葉は9月〜10月に大量に展開し、その時期の光合成量も多いことから、光合成産物の生産量など地上部の要因の影響も受けていると考えられた。ミズナラとクマザサでは、細根生産の季節パターンが異なることが明らかになった。
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Research Products
(2 results)