2009 Fiscal Year Annual Research Report
高精度な古植生復元のための針葉樹を主体とする気孔分析法の確立
Project/Area Number |
20780121
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
志知 幸治 Forestry and Forest Products Research Institute, 立地環境研究領域, 主任研究員 (10353715)
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Keywords | 気孔分析 / 孔辺細胞 / 針葉樹 / 古植生 / 副細胞 |
Research Abstract |
本研究は、土壌や湿原堆積物中の気孔化石を調べる「気孔分析法」を日本にはじめて導入することにより、針葉樹古植生の高精度な復元を可能にしようとするものである。現存する日本産針葉樹の気孔識別マニュアルを作成し、実際に日本国内の堆積物に気孔分析を適用することにより、気孔分析法の有効性について検証を行う。本年度は、日本において気孔分析を進める際の基礎となる「日本産針葉樹気孔の識別マニュアル」を作成するため、外国産樹種を含む針葉樹50種の針葉を採取し、気孔の長径と短径、上部層の形状、上部層と下部層の接触角度および副細胞の形状を計測した。マツ科はマツ属、トウヒ属、モミ属、カラマツ属、ツガ属を識別でき、マキ科マキ属についても識別可能であった。また、花粉形態からは識別不可能なヒノキ科、イヌガヤ科およびイチイ科の分類群についても、気孔形態からイヌガヤ科、スギ属、ビャクシン属を含む分類群、ヒノキ属とイチイ属の分類群、およびアスナロ属、クロベ属、カヤ属の5つに大別できることが示された。こうして作成した識別マニュアルを基に、八幡平・石沼のオオシラビソ林内から採取した土壌を用いて気孔分析を行った。その表層試料において2900個/mlのモミ属気孔の産出が認められたが、モミ属以外の気孔は含まれていなかった。一方で、同試料の花粉分析から、石沼周辺に分布しないスギ属の花粉が40%産出するが、モミ属の産出は9%に過ぎないことが明らかになっている。このことから、表層土壌中の気孔の存在は現地の植生分布を強く反映していることが明らかになった。
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