2010 Fiscal Year Annual Research Report
高精度な古植生復元のための針葉樹を主体とする気孔分析法の確立
Project/Area Number |
20780121
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
志知 幸治 独立行政法人森林総合研究所, 立地研究環境領域, 主任研究員 (10353715)
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Keywords | 気孔分析法 / 針葉樹 / 古植生 / オオシラビソ / 花粉分析 |
Research Abstract |
本研究は、土壌や湿原堆積物中の気孔化石を調べる「気孔分析法」を日本にはじめて導入することにより、針葉樹古植生の高精度な復元を可能にしようとするものである。現存する日本産針葉樹の気孔識別マニュアルを作成し、実際に日本国内の堆積物に気孔分析を適用することにより、気孔分析法の有効性について検証を行う。本年度は、前年度までに作成したマニュアルを基に、モミ属のオオシラビソが分布する北東北地域を対象に気孔分析の有効性を検討した。八幡平および安比から採取した堆積物について、気孔分析と花粉分析を行い、花粉産出割合および気孔産出量の関係を調べた。オオシラビソ林の直下から採取した堆積物では、モミ属花粉の産出は5~10%であり、モミ属気孔は2000~5000個/cm3含まれていた。一方、オオシラビソ林から数十m離れた位置で採取した堆積物では、モミ属花粉は0.5~5%含まれていたのに対し、モミ属気孔は全く含まれていない試料が大半であった。この結果から、花粉よりも気孔の方がよりオオシラビソ林の分布範囲を反映した産出となることが明らかになった。このことは、気孔および花粉の産出割合の分析により、その当時のモミ属が分布していた範囲を大まかに推定できる可能性を示唆している。オオシラビソ以外の針葉樹については検討することができなかったが、今後は早池峰山のアカエゾマツなど、隔離分布している群落を中心に気孔分析の有効性を明らかにする予定である。
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