2008 Fiscal Year Annual Research Report
難分解性有機物「リグニン」を指標とした、森林土壌における腐植生成プロセスの解析
Project/Area Number |
20780122
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
小野 賢二 Forestry and Forest Products Research Institute, 東北支所, 主任研究員 (30353634)
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Keywords | 固体^<13>C NMR / 腐植化過程 / 土壌有機物 / 芳香環態炭素 / リター分解 |
Research Abstract |
有機物の腐植化過程におけるリター成分の組成変化を明らかにするために、固体^<13>C交差分極マジック角度回転核磁気共鳴法(CPMAS NMR)により段階的に分解させた落葉リターと表層土壌の各試料を分析した。試験地は茨城県内の筑波山共同試験地(スギ林)、天岳良試験地(ヒノキ林)、小川学術参考林(落葉広葉樹二次林)の3林分を設定した。ホロセルロースに由来すると考えられるO-alkyl態炭素の組成は腐植化過程の進行に伴って急激に減少した。これは比較的分解されやすいホロセルロースが難分解性のリグニンに比べ選択的に分解されていることを示唆する。ポリエチレン分子から構成されると考えられる脂質態炭素の組成は腐植化の進行とともに徐々に増加したが、糖鎖やリグニン鎖構造から脂質への微生物的変換により増加したのだろう。aryl基やO-aryl基を含む芳香環態炭素の組成は腐植化過程全体を通じてほぼ一定だった。これは、芳香環態炭素が他の易分解性の成分に比べ腐植中に残留しやすいことを示唆する。carbonyl態炭素は腐植化過程で若干増加した。carbonyl態炭素は土壌有機物生成過程において卓越するであろう酸化分解反応により生成されているのではないかと思われる。 リター分解試験を行った3林分におけるL、F、A_1層試料についても^<13>C NMR分析を行った。その結果、堆積有機物層を含む土壌試料の有機物組成変化は、分解リター試料と同様であった。すなわち、L層→F層→A_1層と分解段階の進行とともに、O-alkyl態炭素とcarbonyl態炭素は増加し、脂質態炭素は減少、芳香環態炭素は分解段階を通じて変わらなかった。また、リター分解3年目の試料は、F層試料とA_1層の中間的な組成を示した。このことから、関東の森林土壌では、リター分解の開始から3年程度でF層とA_1層の中間的な性質を持つ腐植が生成されることが示された。
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Research Products
(3 results)