2010 Fiscal Year Annual Research Report
クロマツの抵抗性がマツノザイセンチュウの病原力に及ぼす影響
Project/Area Number |
20780125
|
Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
松永 孝治 独立行政法人森林総合研究所, 林木育種センター九州育種場, 研究員 (40415039)
|
Keywords | 微生物 / 林学 / マツノザイセンチュウ |
Research Abstract |
現在,マツ材線虫病対策として抵抗性マツが植栽されているが,マツの抵抗性が上昇した場合に,病原生物であるマツノザイセンチュウの病原力が上昇するかどうか明らかにすることが本研究の目的である。これまでのマツ材線虫病に関する研究により,マツノザイセンチュウの病原力は遺伝形質であること,またその病原力には大きな変異があることが明らかになっている。これらの事実はマツノザイセンチュウがこれまでのマツより抵抗性の高いマツに感染すると,病原力に選択が働き,病原力が上昇する可能性を示唆している。抵抗性マツの植栽が行われる現在,マツノザイセンチュウの病原力上昇がおこるかどうかは,今後の防除対策・抵抗性育種戦略を構築するために早急に明らかにする必要がある。 本年度は抵抗性クロマツおよび精英樹クロマツ(抵抗性について未改良である)に由来するさし木クローンを用いて病原力の選抜を行った線虫の一部についてその病原力を評価した。具体的にはマツノザイセンチュウアイソレイト(島原・S10・T4・OK169)をさし木苗に接種し,その枯死木から再分離した線虫アイソレイトを培養して抵抗性クロマツ波方37open家系に接種した。抵抗性および精英樹のさし木から再分離したアイソレイトはそれぞれ52%と41-52%の苗を枯死させた。つまり線虫の病原力の選抜に用いたクロマツの抵抗性の違いは線虫の病原力の上昇に影響をしない場合があることが示唆された。この結果に関してH23年度に別系統を用いて確認する。 野外の抵抗性マツ林分における線虫の病原力を明らかにするため,薩摩川内市の抵抗性マツ林分と感受性林分でそれぞれ線虫を採集して抵抗性クロマツ田辺54open家系に接種した。その結果,抵抗性林分および感受性林分由来のアイソレイトはそれぞれ0~44%(平均30%)および0~50%(平均31%)の苗を枯死させた。分散分析の結果,採集林分の抵抗性は枯死率に影響しなかった(一元分散分析,P=0.95)。H23年度には別の林分に由来するアイソレイトの病原力を評価する。
|