2008 Fiscal Year Annual Research Report
ミクロフィブリル傾角の樹幹内変動に及ぼす樹木の力学特性の解明
Project/Area Number |
20780132
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
山下 香菜 Forestry and Forest Products Research Institute, 木材特性研究領域, 研究員 (60353900)
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Keywords | ミクロフィブリル傾角 / 材質 / 樹幹内変動 / 強度的性質 |
Research Abstract |
本研究の目的は、若齢木段階と成木段階とで、形成される樹幹木部の仮道管細胞壁におけるミクロフィブリル傾角(MFA)が異なる要因を解明するために、MFA変動に関与する力学特性パラメータを抽出することである。 本年度は、樹幹木部のMFAが異なる2つのスギクローンの若齢木を用いて、地上部の重量、樹幹の成長応力解放ひずみおよび根系構造を、クローン間で比較した。2クローンは、同樹齢で、同一林地に生育したもので、樹幹径と樹高はほぼ同じであった。MFAが小さいクローンの方が、MFAが大きいクローンに比べて、樹幹のヤング率が高く、地上部重量が大きく、樹幹重量に対する樹冠重量の割合が大きく、樹幹における軸方向表面解放ひずみが大きかった。また、根株から分岐する側根の本数が少なく、1本あたりの断面積が広かった。根材のMFAの違いは小さかった。若齢木段階におけるMFAのクローン間差が幹材で大きく、根材で小さかったことから、スギ未成熟材においてMFA変動が大きいことは、地上部独特の現象であることが示唆された。 スギ成木の幹材と根材から薄片状試験片を作成し、引張試験を行った。根材では、幹材に比べて密度が低く、ヤング率が低い傾向があった。根材では、密度とヤング率との間に正の相関が認められた。以上のことから、幹材では、未成熟材部におけるMFAの変動が大きいために、ヤング率はMFAに大きく影響されるのに対して、根材では、MFAの樹幹内変動が小さいために、ヤング率に対するMFAの影響が小さい可能性が示唆された。
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