2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヤツメウナギ類における成熟機構解明のための分子遺伝学的及び生態学的アプローチ
Project/Area Number |
20780136
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
山崎 裕治 University of Toyama, 大学院・理工学研究部(理学), 准教授 (30332654)
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Keywords | 脊椎動物 / ヤツメウナギ / 進化 / 種分化 / 保全 / 性成熟 / 遺伝子発現調節 / 環境 |
Research Abstract |
近年資源量減少が懸念されているヤツメウナギ類の保護・保全を行うために不可欠な知見である性成熟機構の解明を目指し,分子遺伝学的及び生態学的研究を行った.異なる生活史(回遊型と河川型)を持つカワヤツメ集団を対象に,ゲノムDNAおよびcDNAにおける遺伝子流動パタン及び遺伝子発現の網羅的な解析を行った結果,1つのマイクロサテライト遺伝子座およびその周辺配列において,生活史間で異なる配列を持つことが示された.この配列の下流側には,サケ・マス類を含むいくつかの脊椎動物において成長および浸透圧調節などに関わることが報告されている遺伝子の相同遺伝子が存在していた.一方,それら相同遺伝子における配列自体には,生活史間で差異が認められないことから,マイクロサテライト遺伝子座周辺配列が当該遺伝子の発現調節に関わる可能性を検証する必要性が示唆された. 一方,昨年度の研究により性成熟を促す要因として,幼生期の成長率と生息環境が示唆されてた.そこでスナヤツメ南方種を対象として異なる生息環境下における餌資源利用パタン,特に餌選択性を野外調査により調べた.その結果,餌利用パタンは生息地間で異なっており,また餌カテゴリ(珪藻の種類)に対する選択性を有していることが示された.また餌資源が豊富な湧水性河川の個体に比べて,餌資源の乏しい河川の個体においては,摂餌量が乏しく,成長に対する負の影響が示唆された.さらに湧水性河川において共存するスナヤツメ北方種と餌資源利用パタンが類似しており,餌を巡る種間競争は乏しいことが考えられた.以上のことからヤツメウナギ類の成長や性成熟には餌資源利用を補償する生息環境要因が強く関わっていることが示唆された. これらの成果は,ヤツメウナギ類の保護・保全や種分化の解明に資するにとどまらず,脊椎動物における性成熟機構の解明にも重要な示唆を与えるものと期待される.
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