2008 Fiscal Year Annual Research Report
魚類資源における日本海-太平洋間の適応的分化の検出 : エコゲノミクス解析
Project/Area Number |
20780139
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
小北 智之 Fukui Prefectural University, 生物資源学部, 講師 (60372835)
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Keywords | 適応進化 / 魚類 / 自然淘汰 / 海洋生態系 / 遺伝資源 |
Research Abstract |
日本各地に生息する遡河回遊魚シロウオには、研究代表者の研究によって、1)日本海型と太平洋型といった2つの地理的分化集団が存在すること、2)個体の適応度に関与していると考えられるいくつかの形質に対照的な表現型分化が生じていることが明らかとなっており、このような変異は過去に激しい環境変動を経験した日本海に生息する系統の適応進化の産物であることが示唆されている。このようなシロウオ日本海型と太平洋型間の適応的分化の痕跡を探索するために、新規に単離・マーカー化したマイクロサテライト100遺伝子座のジェノタイピングデータを基にした集団ゲノム学的解析を行った。その結果、日本海型に正の淘汰が生じた可能性を示唆するいくつかの遺伝子座を検出した。さらに、シロウオ日本海型は太平洋型よりも摂餌行動が活発で、成長速度が速く、その結果として、体サイズが大きいことがこれまでの研究で判明している。このような日本海型の形質に関与する候補遺伝子群として、成長関連遺伝子群(成長ホルモン遺伝子、成長ホルモンレセプター遺伝子、IGF-1遺伝子)と食欲関連遺伝子群(亢進性のタンパクを対象 : NPY遺伝子、ガラニン遺伝子、アグーチ遺伝子、MCH遺伝子、グレリン遺伝子、オレキシン遺伝子)をターゲットとし、これら遺伝子のcDNAクローニングを実施した。このうち平成20年度には、成長ホルモン遺伝子、NPY遺伝子、ガラニン遺伝子、アグーチ遺伝子、MCH遺伝子のcDNAクローニングに成功した。今後、これらの遺伝子を集団ゲノム学的解析に用いるために、イントロン部位やUTR部位の多型部位を対象とした分子マーカー化にも成功した。
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