2009 Fiscal Year Annual Research Report
バンドウイルカ消化管におけるアクアポリンを介した水吸収機構に関する研究
Project/Area Number |
20780143
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
鈴木 美和 Nihon University, 生物資源科学部, 講師 (70409069)
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Keywords | 鯨類 / 浸透圧 / 水吸収 / アクアポリン / 小腸 / チャネル |
Research Abstract |
哺乳類の小腸での水吸収機構として,吸収細胞において糖やNa+の吸収時に生じるNa+勾配を利用し,管腔側の細胞膜にあるアクアポリン(AQP)を通り細胞を横切って水が吸収される経細胞経路と,細胞間隙を通り水が吸収される傍細胞経路が想定されているが,陸上動物では後者により水を吸収していると考えられている.我々は,周環境から真水を摂れない鯨類では,小腸における餌からの直接的な水吸収が重要であり,これを迅速かつ最大限に行なうために経細胞経路が重要な役割を果たすのではないかと予想し,バンドウイルカ小腸を用いて研究を行い,以下の成果を得た(Suzuki,2010). 1.バンドウイルカAQP1の透水性の証明:前年度の研究により,イルカ小腸で発現が確認されたAQPのうちAQP1が吸収細胞の管腔膜に分布し水吸収に関与することが強く示唆されたため,AQP1の水透過性を確かめた.イルカAQP1のORF領域を含むプラスミドを作製してコンストラクトを得た後,cRNAを合成してXenopus卵に微量注入し発現させた.この卵を生理的食塩水から低張液へ移して経時的に撮影し,透水性(Pf値)を算出した結果,AQP1発現卵ではコントロールと比べ有意に大きいPf値が得られ,水銀処理によりこの有意差が消失したことから,イルカAQP1が水透過能をもつことが証明された. 2.小腸でのAQP1および各種チャネルの分布様式の解明:イルカの小腸は陸上の肉食性哺乳類に比べて非常に長い.我々が組織学的に観察した結果,ほとんどが絨毛をもつ小腸であることが判明した.続いてAQP1の分布を調べた結果,空腸から回腸後方まで広範囲にわたり吸収細胞の管腔膜にAQP1が分布することが分かった.このことから,イルカは小腸を長くすることで水吸収を最大限に行なっていると考えられた.また,小腸吸収細胞には糖とNa+の共輸送体であるSGLT1とNa+を体内へ輸送するNa+/K+/ATPaseが発現分布しているという結果が得られ,イルカ小腸でもNa+勾配を生じさせ水の駆動力を生み出すチャネルがAQP1と共発現し,経細胞経路による水吸収に関与していることが示唆された.
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Research Products
(5 results)