2009 Fiscal Year Annual Research Report
"先祖返り"したイルカの造血器官に関する比較免疫学的研究
Project/Area Number |
20780145
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
伊藤 琢也 Nihon University, 生物資源科学部, 講師 (20307820)
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Keywords | イルカ / 造血 / モノクローナル抗体 / 好中球 / 好酸球 / 比較免疫学 / 造血幹細胞 |
Research Abstract |
水棲動物であるイルカにおける造血器官の存在場所は明確にされておらず、造血器官の形成および造血機序も不明である。本研究は、イルカ血液細胞の供給源である造血幹細胞の定着器官、幹細胞の移動に関わる走化性因子およびその受容体を同定することによって、哺乳動物において特異なイルカの造血の成立機序を明らかにし、その系統発生学的な意義を解明すると同時に、未だ不明な点の多い造血幹細胞の造血微小環境への定着機構および造血に必須な因子・条件を見出すことを目的とした。 当該年度は、各種イルカの骨格構造および骨髄組織の観察を中心に検討を行った。まずバンドウイルカ幼若個体の全身CTスキャンによって、骨格構造の把握および骨髄組織の探索を行い、またシワハイルカおよびコビレゴンドウの前鰭に存在する上腕骨および前腕骨内部を解剖・組織学的に観察した。その結果、上腕骨骨頭の海綿骨腔内に陸生哺乳動物の赤色骨髄に類似した組織が肉眼的および組織解剖学的に認められた。同部位へのコア穿刺によって得られた塗沫標本には、陸生哺乳動物の骨髄組織に存在するものと同様な造血細胞群、すなわち巨核球、骨髄球、赤芽球、幼若単核球などの血液前駆細胞が多数観察され、イルカ類においても骨髄造血が行われていることが確認された。したがって、イルカ類の前鰭基部の上腕骨骨頭部が骨髄バイオプシー検査の標的として応用できる可能性が示唆された。なお、骨髄から得られる血液前駆細胞の機能解析や分化能の有無および骨髄以外の器官・臓器における造血の可能性について継続的検討を行っている。
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