2010 Fiscal Year Annual Research Report
“先祖返り"したイルカの造血器官に関する比較免疫学的研究
Project/Area Number |
20780145
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
伊藤 琢也 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (20307820)
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Keywords | イルカ / 造血 / モノクローナル抗体 / 好中球 / 好酸球 / 比較免疫学 / 造血幹細胞 |
Research Abstract |
水棲動物であるイルカにおける造血器官の存在場所は明確でなく、造血器官の形成および造血機序は不明である。本研究は、イルカ血液細胞の供給源である造血幹細胞の定着器官、幹細胞の移動に関わる走化性因子およびその受容体を同定することによって、哺乳動物において特異なイルカの造血の成立機序を明らかにし、その系統発生学的な意義を解明すると同時に、不明な点の多い造血幹細胞の造血微小環境への定着機序および造血に必須な因子や条件を見出すことを目的とした。 当該年度は、前年度までの研究の結果、造血が行われていることが組織学的に示唆された上腕骨の骨頭部より骨髄組織を取り出して、それらに含まれる骨髄細胞の遺伝子発現像を解析し、さらに骨髄細胞が培養下で増殖・分化能を有するかを確認することによって造血細胞の存在について検討した。バンドウイルカの上腕骨から分離した骨髄単核細胞(BMMC)はヒトやマウスと同様に造血細胞に特異的な遺伝子発現像を示し、造血細胞群であることが示唆された。造血細胞の増殖能を評価するCFU assayにより、BMMCは優れた分化・増殖能を有することが明らかにされ、その形態から3種類のコロニー形成が確認された。3種類のコロニーは、コロニー構成細胞の形態学的特徴とその遺伝子発現像から、好中球、単球/マクロファージ、巨核球および好酸球に分化する造血前駆細胞の増殖によって形成されており、BMMCは少なくとも3種類の造血前駆細胞を含むことが明らかになった。以上より、バンドウイルカのBMMCは、様々な血液細胞に分化する造血前駆細胞を有する造血細胞群であり、イルカの上腕骨の骨髄組織は造血器官であることが明らかとなった。
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