Research Abstract |
1.昨年度,ティラピアの塩類細胞において,淡水で強く発現するイオントランスポーター2種(NCC,NHE3)と海水で強く発現するイオントランスポーター2種(CFTR,NKCCla)を同定し報告した(Hiroi et al.,2008;Inokuchi et al.,2008)が,今年度は,淡水におけるイオン取り込み機能をさらに詳細に調べるために,NaとClの濃度を変化させた「人工淡水」を作成し,各輸送体mRNAの変化をみた.その結果,NHE3は低Na環境,NCCは低Cl環境で,それぞれ強く発現したため,NHE3はNa,NCCはClの取り込みに,それぞれ関与していることが示唆された(lnokuchi et al.,2009). 2.NCCは研究代表者がティラピアの塩類細胞から発見した新規イオントランスポーターであるが,ゼブラフィッシュの塩類細胞でもNCCが存在すること,低Cl環境においてNCCが強く発現すること,NCCを特異的阻害剤Metolazoneやアンチセンスモルフォリノオリゴで阻害するとClの取り込みが阻害されることなどが明らかとなった(Wang et al.,2009). 3.ニジマスからはNCC遺伝子を単離できなかったが,NHE3遺伝子を単離することができた.ニジマスでは腎臓にのみ発現するNHE3aと鯉の塩類細胞にのみ発現するNHE3bが存在し,NHE3bは低イオン環境で強く発現することがmRNA・タンパク両レベルで明らかとなった.NHE3bは酸・塩基調節にも関与していると考えられるが,酸性環境での発現の亢進は認められなかった.また,今回作成したニジマスNHE3bに対する抗体は,ニジマスだけでなくティラピア,シャッド,タイセイヨウサケなどでも有効であったため,真骨魚類全般で利用可能なユニバーサル抗体としての利用が期待できる.
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