2010 Fiscal Year Annual Research Report
魚類補体成分由来の抗菌ペプチドを利用した細菌コントロール
Project/Area Number |
20780148
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Research Institution | Fukuoka Women's Junior College |
Principal Investigator |
無津呂 淳一 福岡女子短期大学, 食物栄養科, 講師 (40399100)
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Keywords | 生体防御 / 補体 / 抗菌ペプチド / 食品保存 |
Research Abstract |
本研究では哺乳類で明らかになった補体C3、及びC4の新機能である抗菌活性が、複数コピーをもつ硬骨魚類の補体成分(C3,C4,C5)にも存在し、また機能的多様性を獲得しているのかどうかを明らかにし、これを魚病薬、及び食品の保存技術として応用することを目的としている。昨年度の研究でコイ補体成分C3-Q1、及びC4-2アイソタイプのアミノ酸配列を基に作成した短鎖ペプチド(19、及び17残基)は、O-157等の大腸菌、サルモネラ・エンテリティディスに対して抗菌作用を示し、また、C3-Q1ペプチドのアミノ酸を2-8残基改変したペプチド(19残基、14種類)は、強いものでは1.6-3.1μMでMICを示し、ネイティブなものよりも10倍ほど強い抗菌作用を示すことを明らかにした。 平成22年度の研究では、これらの改変ペプチドの抗菌作用の発現に対する塩濃度の影響、及び細胞障害作用について検討した。 (1)改変ペプチドの抗菌作用発現に対する塩濃度の影響 一般的な抗菌ペプチドは塩濃度の影響を受けやすく、生理的塩濃度で抗菌作用が低下することが知られている。上記改変ペプチドを用いて150mM、NaCl存在下で抗菌作用がどのように変化するのかを検討した。塩濃度の影響はRDA法によりMICを算出し、比較することにより評価した。改変ペプチドのうち、α-helix構造の安定化を図る目的で2~3残基をロイシンに置換したものについては抗菌作用の低下が抑制されており、塩濃度に対する耐性獲得に寄与していることが示唆された。 (2)改変ペプチドの細胞障害作用 改変ペプチドが宿主に対してどの程度の細胞障害作用を持つのかを明らかにするためにヒツジ赤血球を標的細胞とした溶血活性により評価した。5%-glucose(0mM NaCl)試験区では、多くの改変ペプチドが0.1μMでも溶血が観察された一方で、150mM NaCl試験区においては100μMでも溶血が観察されないものがあることが判明した。細胞障害作用の低下に関与するアミノ酸残基は複数あることが示されており、今後より詳細に検証していく必要がある。
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