2009 Fiscal Year Annual Research Report
地球上の重要生産者である珪藻類の動態はウイルス感染の影響をどの程度受けるか
Project/Area Number |
20780149
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
外丸 裕司 Fisheries Research Agency, 瀬戸内海区水産研究所赤潮環境部, 研究員 (10416042)
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Keywords | 珪藻 / ウイルス / 生態 / 水産学 |
Research Abstract |
広島湾における珪藻Chaetoceros tenuissimusの動態をリアルタイムPCR法で定量的に測定するとともに、本種感染性ウイルスの動態をMPN法で推定した。その結果、ウイルスの現場における急激な増加は宿主のブルームを反映していることが明らかとなり、両者の動態には密接な生態学的関係があるものと推察された。 昨年度分離に成功したC.tenuissimus感染性ウイルスCtenDNAVの全塩基配列の決定に成功した。本ウイルスゲノムは5639ベースの環状1本鎖DNAであり、そのうち875ベースが二本鎖DNAで構成されていることが明らかとなった。塩基配列に基づいた4通りの組合せによるPCR試験においても、本ウイルスゲノムが環状構造であることが支持された。本ウイルス粒子は感染の過程において、宿主細胞の核内に蓄積されることが透過型電子顕微鏡による観察で明らかとなった。また、ウイルス感染した宿主細胞の核内には成熟したウイルス様粒子の他にロッド状粒子が存在することも確認されたが、本粒子の感染過程における役割等その詳細の解明にはさらなる検討が必要であると考えられた。増殖試験の結果からは、本ウイルスのバーストサイズは宿主細胞当たり360感染単位であることが推察された。これまでに性状が明らかにされている珪藻感染性1本鎖RNAウイルス3種(CtenRNAV,RsRNAV,CsfrRNAV)のRNA依存性RNAポリメラーゼドメインを対象としたML法による系統学的解析を行った結果、それらは明らかな単系統を形成した。昨年度実施したNJ法による結果とあわせ、本ウイルスグループを珪藻感染性RNAウイルス属(Bacillarnavirus属)として国際ウイルス分類委員会に提唱した。以上の結果より、海洋環境中に進化的に近しい珪藻感染性ssRNAウイルスグループが存在するものと推定された。
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Research Products
(13 results)