Research Abstract |
本年度の主な研究内容及び結果は以下のとおりである。 1.マグロ輸出の長期供給関数の計測 第一に,生物経済モデルから導出される長期供給関数は市場データから計測することが可能であり,その形状や安定性は統計データから検証できることを明らかにした。インドネシアからのマグロ輸出データに当てはめた場合,生物経済モデルの理論が示唆する結果を示し,インネシアのマグロ輸出は取引数量と価格の両方が上昇する「資源開発段階」から,取引数量と価格がトレードオフの関係を示す「資源枯渇の前兆段階」に入っていることが示唆された。 第二に,計測された生物経済モデルの係数からカルマン・フィルター法を用いて調整費用係数の時系列的変化を観察したところ,技術進歩による生産性の伸びを考慮しても,マグロの漁業費用は,この20年間に2倍以上増加していることが明らかになった。 第三に,漁業資源の枯渇の最大の問題は,資源が減少すると価格は上昇するが,それが漁業者にとって,さらなる漁獲へのインセンティブとなることである。特に,需要が価格に対して非弾力性な場合には,資源減少により漁獲量が減少しても,価格上昇効果で水揚金額全体は上昇することすらある。今後は,資源管理と市場データを結び付け,市場取引データを資源管理手法の中に取りいれていくことが重要であることを提言した。 2.貧困マップの作成と分析 貧困と関連の深い要因としては,教育,保健,インフラストラクチャー,就業機会等が挙げられているが,本年度は貧困の地理的特徴とその社会経済的要因を特定するため、インドネシアの貧困マップを作成し、その要因を主成分分析や重回帰分析で分析した。貧困指標の貧困世帯比率,貧困ギャップ率,二乗貧困ギャップ率は、保健衛生や教育水準と強い相関があり、また漁村が多く点在するインドネシア東部の遠隔地で高いことが明らかになった。
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