Research Abstract |
2010年8月から9月にカナダ・Newfoundland and Labrador州のSt. Anthony地区,New Brunwick州のズワイガニ漁業基地であるアカディアン半島,及び首都オタワに渡航し,現地調査と資料収集を行った。カナダのズワイガニは漁獲後,ほぼ全量が加工業者によってセクション(縦に半分に切った状態のカニ)に加工され,米国,日本,そしてむき身に再加工して日本に仕向けるために中国に輸出されている。 Newfoundland and Labrador州では,ズワイガニの品質管理と販売に関しては全て加工業者が担っており,漁業者は連邦政府の設定する規則を守って操業するだけである。当州のズワイガニ加工品は,米国にはそのまま輸出し,日本向けには,むき身への再加工のために中国へ輸出されている。その実態は,比較的見た目の良い物が米国へ仕向けられ,身入りの良い物は中国再加工に仕向けられるという様にある程度の棲み分けが行われている。 アカディアン半島では,品質の良い物はガス凍結の後に日本へ直接販売され,それ以外は塩水ブライン凍結の後に米国に販売されており,ここでも一定の棲み分けが見られた。聞き取り調査を行った加工業者は,米国の経済状況の悪化に伴って,需要の縮小が予想されることから,今後は日本向けの高品質・高価格品に力を入れたいとの意向であった。 従来の研究と同じく,米国仕向けの割合が増えているからといって,直ちに日本が「買い負け」しているとは言えず,両者はやはり嗜好の異なる市場であると判断される。世界的な経済状況の悪化とドル安に伴い,日本市場が相対的に魅力ある市場として認識される様になって来ている。このことから「買い負け現象」は少なくともズワイガニに関しては,限定的かつ一時的なものであったのではないかと推察される(但し,日本の経済状況の先行きが不安定になったので,再び「買い負け現象」が起こる懸念がある)。
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