Research Abstract |
本研究では, バイオマスタウン構想が公表されている遠野市を対象として, まず, 各種統計情報を用いて現況における遠野市の11の旧町村の窒素フローのコンパートメントモデルを構築し, 推定を行った。その結果, 旧町村ごとに特徴的な窒素フローがみられたが, 現況の問題点として、地域外からの食料、飼料の購入量が多いこと、有機物肥料として生ゴミや家畜糞尿が有効に利用されていないこと、牧草地に対し過剰な窒素投入があること、地域によっては蓄積・溶脱する窒素量が大きいところが存在するという点があげられた。 そこで, 今年度は生物資源のうち, 家畜糞尿の堆肥利用に焦点を当てて評価を行った。遠野市全体で見ると, 家畜糞尿による窒素発生量985tonN/yearに対して堆肥施用による農地受入可能量は1, 002tonN/yearであり, ほぼバランスが取れていることが分かった。しかし, これを集落単位でみると窒素過剰な地域とそうでない地域があるため, 糞尿・堆肥の輸送を通じた窒素のやりとりが必要であることがわかった。そこで, 糞尿・堆肥の輸送にかかる環境負荷を, リソースマイル(RM)を用いて評価した。ここでは糞尿発生場所→堆肥化施設の輸送(RM1)と堆肥化施設→農地の輸送(RM2)の2回を合計して算出した。輸送距離については, 道路を用いた最短経路をネットワーク解析によって算出した。堆肥化施設を1箇所のみ市の重心に設置する集中型システムと, 各旧町村の重心に設置する分散型システムを比較したところ, それぞれ1, 074,020ton・kmおよび281,090ton・kmであり, 大きな違いあることが分かった。また, 現況では市内に土作りセンターが6箇所あるが, このときのRMを算出すると533,019ton・kmとなった。そこで, これに1箇所堆肥化施設を追加すると, 351,697ton・kmまで改善され得ることが分かった。
|