2009 Fiscal Year Annual Research Report
気候変動による流域水環境の変化が汽水域の生物生息環境に及ぼす影響評価に関する研究
Project/Area Number |
20780174
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
宗村 広昭 Shimane University, 生物資源科学部, 助教 (90403443)
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Keywords | 地球温暖化 / 施肥量・施肥時期 / Soil and Water Assessment Tool / 流域水文量変化 / 栄養塩量 |
Research Abstract |
本研究は,地球温暖化による気候システムの急激な変化が流域圏に及ぼす影響を予測し汽水域の生物多様性や生態系サービスに及ぼす影響を評価することを目的に研究を進めた.平成21年度は特に網走川流域調査を重点的に行った.対象流域である北海道網走川は,流域面積約1100km^2,河川長約120kmの一級河川である.流域土地利用の約80%が森林,農地が約19%である.下流部に位置する網走湖は面積約33km^2の汽水湖であり,内水面漁場として地域の経済を支えている.ヤマトシジミが特産で国内の約4%(道内最大)を占めている.本研究では,Soil and Water Assessment Tool(SWAT)モデルを網走川流域に適応し,流域圏の水文循環過程を再現するとともに,主に面源と呼ばれる農地に起因した窒素およびリンの季節変動傾向を再現した.モデル解析に先立ち,流域圏の人間(営農)活動を把握するため,網走川流域圏に位置する網走市,女満別町,美幌町,津別町において現地踏査および聞き取り調査を行い,現地の営農活動や施肥量・時期を把握した.そしてその情報をモデルへのインプットデータとして活用した.月別に施肥量など流域圏での窒素およびリンの発生負荷量を算出した結果,雪解け後の営農活動が一斉に開始される4月および5月と秋まき小麦等の準備・施肥時期である9月において多くの負荷量(年間発生負荷量の50%程度)が発生していることが把握された.また近年の集中豪雨化や気温上昇および将来的な気候変動が流域圏水環境に与える影響を予測した結果,島根県斐伊川流域と比べると,気温上昇による蒸発散量の増加や降雪等水量の減少等の程度が大きいと推定された.特に蒸発散量は3月に,降雪等水量は4月と11月に,顕著にその傾向が伺えた.さらに網走川流域圏は農地の中でも畑地の占める割合が高く,降雨強度の変化による土壌流亡とそれに起因した栄養塩の流出量増加が,島根県斐伊川流域と比べて大きいことが推定された.
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Research Products
(4 results)