2008 Fiscal Year Annual Research Report
中山間地域における農業基盤と社会構造からみた適切な獣害対策計画策定手法の研究
Project/Area Number |
20780175
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
武山 絵美 Ehime University, 農学部, 准教授 (90363259)
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Keywords | 獣害 / 耕作放棄 / 合意形成 / 農地保全 / 中山間地域 / 水田 |
Research Abstract |
データの蓄積および地元協力取付の観点から, 研究対象地域を和歌山県古座川町潤野地区(中山間・水田農業地域)に選定した. 当該地域において平成19年度に実施した予備調査から, 獣害を受けやすい農地には, (1) 耕作放棄地に近い, (2) 防獣用電気柵に近い, (3) 山際・河川に近い, という特徴があるとの結果を得ていた. そこで, 平成20年度には, 獣害対策の改善案として, (1) 耕作放棄地の刈り払い, (2) 河川堤防を利用した電気柵の設置, (3) 河川との境界線における簡易道路の整備, を地元に提案し, 地元住民および行政との協働によりこれらを実践した. 田植時期から稲刈り時期の間, 赤外線センサー付きカメラを設置して加害獣の行動をモニタリングした結果, 改善策により加害獣の出現回数を前年比約3割に抑えられたとの結果を得た. また, アンケート調査による獣害対策意識調査を実施し, 平成20年度における獣害対策の改善が地区住民から高い評価を受けていることを確認した. 評価が得られた要因は, 防獣効果が高いというだけでなく, 柵等の管理における作業負担の軽減も重要な評価要素であったとの結果を得た. すなわち, 持続可能な獣害対策の立案には, 防獣効果だけでなく, 地域住民による管理体制の構築や, 管理作業の効率化なども検討する必要があるということである. さらに, 住民ワークショップ方式による獣害対策立案手法も合わせて検討した. 住民集会を開催して, 被害マップや10年後の所有者年齢別農地マップを作成した結果, これらが集団的な獣害対策を検討する上で重要な材料となったことが後のアンケート調査により確認された. また, センサー付きカメラによる加害獣の存在の可視化は, 非農家を含めた集団的獣害対策への合意形成に大きく寄与したことも, アンケート調査により確認された.
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