2010 Fiscal Year Annual Research Report
作物根の自己土壌改良効果を考慮した畑地の消費水量の定量化
Project/Area Number |
20780176
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
弓削 こずえ 九州大学, 大学院・農学研究院, 助教 (70341287)
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Keywords | 作物根 / 透水性 / 保水性 / 土壌水分 / 消費水量 / シミュレーションモデル |
Research Abstract |
世界的に農業用水の水事情が逼迫する中,節水灌漑のニーズが高まっている.畑地灌漑の分野ではいかに消費水量を精度良く評価し,効率的な灌漑計画を策定するかが急務の課題である.消費水量の精度良い推定には,空間的・時間的に変化する土壌中の水分動態を推定し,作物圃場表面の蒸発散量を場所ごとに求めてこれを積算し,圃場全体の消費水量を求める必要がある. 今年度は,作物根が土壌中の透水性および保水性に及ぼす影響を考慮した作物圃場の消費水量推定モデルを構築した.まず,消費水量のうち,土壌面から蒸発によって損失する成分については,土壌中の水分および熱同時輸送解析を行って定量化した.この解析には土壌の透水性および保水性などのパラメータが必要であるが,これらを決定する際に昨年度の研究成果を組み入れてモデルを改良し,作物根による土壌物理性の場所的な変化を考慮して計算を行うことができるようにした.また,作物根の膨張および収縮によって根の吸水速度は影響を受けると考えられるが,これらを考慮した根の吸水強度の推定手法を確立するため,土壌水分状態と吸水速度の関係を圃場実験によって明らかにした.根の吸水強度の決定には蒸散量が必要であるが,これを求めるために既に研究代表者が完成させている層モデルを導入した.以上のように,土壌中の水分および熱同時輸送解析と層モデルを組み合わせ,作物根の自己土壌改良効果を考慮した消費水量の定量化手法を確立することができた.本研究で構築したモデルの妥当性を確認するため,九州大学内の実験圃場において実験を行った.その結果,計算で得られた消費水量と実測値はほぼ一致しており,モデルの妥当性が示された.また,実際の作物圃場においても本モデルを用いた消費水量の推定を行い,現場における実用性についても確認した.
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