Research Abstract |
東京農業大学網走寒冷地農場において開始した土壌水分と地温に関する観測の結果を解析した。また,凍土層内で不凍水の水ポテンシャルが低下する要因について,クラウジウス・クラペイロンの式をもとに,浸透ポテンシャルとマトリックポテンシャルの寄与を調べた。具体的には,自然な状態の土壌に対し,塩化カリウム溶液を混合することによって,電気伝導度(EC1:5)の異なる試料を数種類作り,凝固点降下度法によって水ポテンシャルを測定し,併せて遠心法によってマトリックポテンシャルを測定し,比較した。その結果,観測圃場における溶質の濃度(EC1:5=0.17dS/m)では,水ポテンシャルの低下は主にマトリックポテンシャルの低下に起因していることが明らかになった。 一方で,圃場で用いている水ポテンシャルセンサの特性を詳細に調べるために,観測圃場の土壌を用いてテンシオメータと比較できる実験を室内で行い,センサの測定範囲を明らかにした。 これらの結果をもとに,圃場での観測結果を吟味したところ,凍結・融解時における凍土層,および凍土層下層のマトリックポテンシャルの定量化に成功し,季節による変化の特徴を明らかにすることができた。さらに,凍土層内の透水係数を推定し,土壌凍結が進行している際の凍土内の水移動の定量化についても試み,既往の研究結果と比較して妥当な値を得た。 以上のことから,不凍水が土壌の凍結・融解時の水移動に果たす役割について,不凍水のマトリックポテンシャルを定量化することにより明らかにした。
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