2008 Fiscal Year Annual Research Report
高品質チーズ製造に向けた放牧牛乳中糖鎖の構造及び機能解析
Project/Area Number |
20780197
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Research Institution | National Agricultural Research Organization |
Principal Investigator |
朝隈 貞樹 National Agricultural Research Organization, 北海道農業研究センター・集約放牧研究チーム, 任期付研究員 (50374773)
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Keywords | 畜産学 / 乳 / 糖鎖 / シアル酸 / 放牧飼養 / 複合糖質 / チーズ / 乳製品 |
Research Abstract |
昨今の飼料価格高騰に対処するため、低コストで省力管理が可能な放牧飼養の導入が進んでいる。以前の研究において、放牧飼養により乳中糖質濃度が変化する可能性を明らかにした。そこで、放牧飼養による乳中糖鎖の濃度変化及び特徴的構造の解明を目的とし、その特徴を明らかにするとともに、乳製品とくにチーズ製造への影響を明らかにする。 本年度の研究結果から、次の三点が明らかになった。乳牛14頭を用い、放牧飼養時間を増加させる(4,8,20時間区,ラテン方格法,対照区は放牧前乳)と乳中ヘキソース濃度は変化しないが、乳中シアル酸濃度は放牧時間依存的に有意な増加がみられた。次に、6頭の乳牛を2週間舎飼い飼養に馴致した後放牧飼養に切り換えると、乳中シアル酸濃度は、放牧飼養期間が進むにつれて有意に増加し、同試験期間中に放牧飼養から舎飼い飼養に移行した区では、有意な減少が確認された。 乳中シアル酸は、単独で存在することが極めて低いことからシアル酸により修飾されたミルクオリゴ糖または糖タンパク質、糖脂質などの複合糖質のいずれかが増加している可能性が考えられた。そこで、放牧飼養時間による乳中酸性オリゴ糖(シアル酸修飾を受けているオリゴ糖)濃度の変化を検討したところ、主要な乳中オリゴ糖である3´シアリルラクトースならびに6´シアリルラクトースは放牧時間が増加するにつれ有意に減少した。このことから、シアル酸修飾を受けているとされるκカゼインなどの糖タンパク質、またはガングリオシドなどの糖脂質が増加しているか、修飾するシアル酸含有糖鎖の構造が変化している可能性が考えられる。 来年度以降、放牧飼養による複合糖質の濃度及び構成糖鎖構造への影響を検討し、さらにこれらシアル酸含有複合糖質を抽出精製してチーズ製造工程における影響を明らかにする。
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