2008 Fiscal Year Annual Research Report
在来種家畜における抗病性因子の同定と遺伝子背景の解析
Project/Area Number |
20780214
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
今内 覚 Hokkaido University, 大学院・獣医学研究科, 准教授 (40396304)
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Keywords | 疾患感受性 / 遺伝子多型 / サイトカイン / プロモーター領域 / 転写活性化能 / フィリピン土着水牛 / 原虫感染症 / ウイルス感染症 |
Research Abstract |
水牛(カラバオ)はフィリピンの代表的な家畜の一つであり、外来種であるRiverine種ならびに土着種であるSwamp種が分布する。フィリピンにおいて水牛の感染症の分子疫学調査はなされておらず、どのような感染症が問題となっているかは不明である。また、Swamp種は他種に比べ疾患抵抗性を示すといわれているが、水牛の免疫学的解析はなされておらずその詳細は不明である。本研究は、フィリピンの水牛における血液病原体の分子疫学調査ならびにRiverine種およびSwamp種の比較免疫字的解析を目的に以下の項目について検討した。フィリピン・ルソン島およびミンダナオ島において水牛572頭から血液を採取し、牛ウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)、牛白血病ウイルス(BLV)、Anaplasma marginale(A.marginale)およびBabesia bigemina(B.bigemina)についてPCR法による検出を試みた.その結果、それぞれの感染率は、BVDVは7.5%、BLVは21.2%、A.marginaleは16.8%、B.bigeminaは5.1%であった。また、BVDVおよびBLV感染において、Riverine種(11.0%と33.5%)の方がSwamp種(0.6%と13.4%)より感染率か高かった。免疫制御因子であるサイトカインは疾病の進行に密接に関与している。そこで水牛のサイトカインmRNAの定量法の確立を目的に、同定した水牛のサイトカイン遺伝子情報から特異的プライマーを構築し、不活化口蹄疫(FMD)ウイルスワクチンを接種した水牛のサイトカインの推移をReal-time PCR法により解析した。その結果、ワクチン接種後2週目から、Th1サイトカイン(IL-2、IL-12p40およびIFN-γ)の上昇が認められた.また、本法をBVDV、BLV、A. marginaleおよびB.bigemina感染水牛のサイトカイン発現解析にも応用し、水牛のサイトカイン定量解析に有効であることを示した。最後に、Swamp種およびRiveme種間のサイトカイン発.現能の差についてReal-time PCR法を用いて解析した。その結果、Riverine種に比べSwamp種がIFN-gおよびTNF-αを多く発現していた。さらに両品種のIFN-γおよびTNF-α遺伝子のプロモーター/エンハンサー領域の遺伝子解析を行った結果、多型が認められたことからルシフェラーゼアッセイ法による転写活性能を比較検討した.その結果、Swamp種の同領域はRiverine種に比べ高いIFN-γおよびTNF-αの転写活性能を持つことが明らかとなった。本研究で、水牛の品種間にIFN-γおよびTNF-αの発現の差があることが示された。さらに、遺伝子多型および異なる転写活性能が認められたことから、今後の品種間における疾患抵抗性解析に寄与する情報を得たと考えられた。
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