2009 Fiscal Year Annual Research Report
身近な生活環境に潜む環境ホルモンの特異的な検出・計測および分解・除去技術の開発
Project/Area Number |
20780234
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Research Institution | Ube National College of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 太二 Ube National College of Technology, 物質工学科, 准教授 (60343109)
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Keywords | 環境ホルモン / 環境ホルモン受容体タンパク質 / 遺伝子工学 / 高感度検出技術 / 酵母 / 生体分子 / 生体機能作用 / 発現制御 |
Research Abstract |
環境ホルモンは極微量でも生体の内分泌系を攪乱する化学物質である。本研究では、特にノニルフェノールを取り上げる。これは、合成洗剤の好気性・嫌気性微生物分解、およびプラスチック容器中の酸化防止剤の酸化・加水分解により生成する。そして、男性生殖器系(精巣・前立腺)を主な標的とし、これまでにマウスへの投与により、F1及びF2マウスでの精巣・前立腺の縮退や精子分化不全が報告されている。 本研究では、前立腺でのAndrogen受容体(AR)による転写活性化にも必要なヒストンアセチル化酵素AIB1のホルモン受容体結合領域に対して、ノニルフェノール存在下で結合するタンパク質をヒト正常前立腺cDNAライブラリーから酵母two-hybrid法で探索して、ヒト新規タンパク質NPR1 (Nonylphenol Receptor 1)を単離した。 大腸菌を用いて発現・精製したGST融合NPR1を用い、バイオレイヤー干渉法(BLI)による分子間相互作用解析を行った結果、NPR1は、cis-androsterone及びノニルフェノール前駆体化合物、さらにはビスフェノールA等の他の環境ホルモンには結合性を示さず、ノニルフェノールを高い特異性で受容した。さらに、LNCap.FGC細胞株内で、NPR1は、ノニルフェノールに応答すると、一部の分子が核内に移行してAIB1との共局在性を示した。この時細胞は、仮足伸長、核型異常等の表現型を示した。 本研究から、エピゲノム修飾により遺伝子発現をグローバルに制御するヒストンアセチル化酵素AIB1を標的とした、ノニルフェノールの新たな内分泌攪乱機構の存在が考えられた。また現在上記成果をもとに、NPR1、AIB1の両遺伝子を用いた、酵母two-hybrid法によるノニルフェノール検出システムの作出も開始している。
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