2009 Fiscal Year Annual Research Report
体節形成における位置情報の動的変化の測定および観察
Project/Area Number |
20780241
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
松井 貴輝 Nara Institute of Science and Technology, バイオサイエンス研究科, 助教 (60403333)
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Keywords | Hes7 / Sprouty4 / 位置情報 / 空間情報 / 発生 / 形態形成 |
Research Abstract |
脊椎動物の前後軸に沿った繰り返し構造は、発生期に一過性に現れる体節の等間隔パターンによって規定される。この等間隔パターンは、胎仔の尾部に存在する未分節中胚葉(presomitic mesoderm、PSMが一定時間(マウス120分、ゼブラフィッシュ30分)ごとに括れ切れることによって形成される。これまでの研究により、抑制性転写因子Hes7を介した遺伝子発現の振動が体節形成の時間的周期性を規定し、体節境界の位置は、増殖因子FGFの濃度勾配によって制御されることが知られている。しかし、時間情報がどのように位置情報へ変換されるのか、その仕組みは明らかになっていない。本研究では、マウス、および、ゼブラフィッシュをモデル動物として使用し、この情報変換メカニズムの解明を行った。マウスPSMにおいて、FGF抑制因子Sprouty4の発現について詳細に解析したところ、野生型の胚では、その発現が振動していることが明らかになかった。しかし、Hes7を欠失したノックアウトマウスにおいては、その発現振動パターンが失われたことから、Sprouty4は、Hes7が作り出す時間情報をへ変換する仲介因子として機能することが強く示唆された。ゼブラフィッシュ胚においても、マウスと同様に振動するかを調べた結果、zSprouty4は発現振動しないことが明らかになった。したがって、マウスとゼブラフィッシュには位置決定機構が異なる可能性が示唆された。これらの成果は、時間情報が空間情報へ変換される機構を明らかにした最初の例として位置づけることができる。我々は、この成果を学術雑誌(PLoS One, 2009)に報告した。
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