2009 Fiscal Year Annual Research Report
新概念、リンパ管新生がもたらすがん標的化リポソームDDSへの影響
Project/Area Number |
20790041
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
清水 広介 University of Shizuoka, 薬学部, 助教 (30423841)
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Keywords | DDS / リポソーム / がん / リンパ管新生 / EPR効果 |
Research Abstract |
本研究の目的は、リポソームを用いたがんへの標的化DDSにおける腫瘍リンパ管新生の影響を解明し、新たながん治療戦略を開発することである。そのためにまず、リンパ管新生を高頻度に誘導するがん細胞の作製を行った。リンパ管新生促進因子VEGF-Cの遺伝子をコードするプラスミドDNAを新たに構築し、マウスB16F10メラノーマ細胞に導入を行ったところ、VEGF-Cの発現が野生型B16F10細胞に比べて遺伝子およびタンパク質レベルで有意に高くなることが確認された。次に、マウスの皮下に同細胞を移植することで固形がん担がんマウスを作製し、固形がんにおけるVEGF-Cおよびリンパ管内皮細胞のマーカーであるLYVE-1の発現を調べたところ、B16F10固形がんに比べB16F10/VEGF-C固形がんにおいて有意にその高い発現が確認された。さらに固形がんにおけるリンパ管の観察を行ったところ、B16F10/VEGF-C固形がんにおいてより多くのリンパ管が存在していることが確認された。この固形がん担がんマウスの固形がん中にポリエチレングリコール(PEG)修飾リポソームを局所投与し、その後の挙動について調べたところ、B16F10/VEGF-C担がんマウスにおいて、リポソームの一部が固形がん周辺のリンパ節に移行しており、さらにB16F10担がんマウスに比べ、固形がん中のリポソーム量も減少することが明らかとなった。以上の結果から、長期血中滞留型リポソームのがんへの送達過程においてリンパ管新生は重要な役割を果たしており、ナノキャリアを用いたがん標的化治療戦略において、リンパ管新生を考慮する重要性が示唆された。
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