2009 Fiscal Year Annual Research Report
血清アミロイドAによる脂質代謝制御とアミロイド線維形成機構の分子論的解明
Project/Area Number |
20790045
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
田中 将史 Kobe Pharmaceutical University, 薬学部, 講師 (40411904)
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Keywords | 血清アミロイドA / 脂質代謝 / アポリポ蛋白質 |
Research Abstract |
続発性アミロイドーシスにおいて沈着するアミロイドの前駆体は急性相反応蛋白質として知られる血清アミロイドA(SAA)である。SAAは、炎症時にその血中濃度が正常時の1000倍にも増加し、大部分が高密度リポ蛋白質(HDL)と結合して存在することから、アポリポ蛋白質として分類され、炎症時の脂質代謝に影響を及ぼすと考えられている。しかしながら、正常時におけるHDLの主要構成蛋白質であるアポリポ蛋白質A-I(アポA-I)に比べて生理的機能や立体構造の解明が進んでいないのが現状である。本研究では、炎症時に増加するSAAが脂質代謝異常やアミロイドーシス発症をもたらす分子メカニズムの解明を目的として実験を行った。 脂質粒子に結合したアポA-IとSAAフラグメントペプチドとの交換反応をRhodamineラベル化した全長アポA-Iを用いて評価したところ、脂質結合能を有するSAAのN末端(1-27アミノ酸)領域がアポA-Iを粒子から解離することが示された。しかしながら、このときの粒子径を動的光散乱法により調べたところ、著しい粒子径の増大が観察された。すなわち、炎症時に濃度が高くなるSAAは、そのN末端(1-27アミノ酸)領域がHDLに結合することで粒子の再構成を引き起こし、結果としてアポA-Iが解離し、脂質代謝に異常をもたらすことが推察された。 また、チオフラビン蛍光を用いてアミロイド線維形成について評価したところ、SAA分子の中間(43-63アミノ酸)領域、C末端(77-104アミノ酸)領域はアミロイド線維形成能を示さず、酸性条件においてN末端(1-27アミノ酸)領域のみがヘパリンの添加によってアミロイド線維形成能を示した。上述のように、N末端(1-27アミノ酸)領域は脂質結合能を有することが明らかになっており、今後、脂質結合性との関連についても調べる予定である。
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