2008 Fiscal Year Annual Research Report
脳形成を司る分泌蛋白質リーリンの、分布と機能部位を制御する分子メカニズム
Project/Area Number |
20790069
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
馬場 敦 Nagoya City University, 大学院・薬学研究科, 助教 (70405215)
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Keywords | 脳神経 / 発生・分化 / 分泌蛋白質 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
分泌蛋白質リーリンは、大脳皮質の層構造が形成される過程に必須の分子であり、その遺伝子変異はヒトにおいて脳構造の形成異常をひきおこす。このような破綻は精神遅滞等高次脳機能障害の原因となるが、実際に「いつ・どこで」リーリンが機能するのかは明らかでない。本研究では、リーリン蛋白質の分布を制御する機構を同定しその分子メカニズムを明らかにすることを目的とし、発生期大脳皮質形成時におけるリーリン蛋白質の機能する領域を解析した。分泌されたリーリン蛋白質は、細胞膜表面に存在するApoE受容体およびVLDL受容体に結合する。これら受容体はリボ蛋白質ファミリーに属しており多量の細胞内プールが存在する。そこでリーリンの受容体結合領域とアルカリフォスファターゼとの融合蛋白質(AP-リーリン)を作成し、細胞膜上のリーリン受容体の分布を調べたところ、発生期の大脳皮質では分泌部位近傍ではリーリンはあまり受容されず、遠く離れた細胞移動の開始点付近で受容されることが明らかとなった。また、リーリン欠損マウスの大脳皮質を用いた解析により、膜表面のリーリン受容体はリーリン結合後すみやかに減少することを見いだした。リーリンは受容体結合後細胞内蛋白質Dab1のリン酸化を誘導する。このDab1リン酸化状態を認識するポリクローナル抗体を作成し、実際にリーリンが機能する領域を解析したところ、発生期マウスの大脳皮質ではリーリンシグナルは主として神経細胞移動の開始点付近で伝達されており、その後細胞移動の最終位置に至るまで、微弱に伝達されていた。このことから、AP-リーリンで示したリーリン受容部位が実際に機能していることが示唆され、さらにリーリン蛋白質は神経細胞の移動過程で多段階に機能するものと考えられた。
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