2009 Fiscal Year Annual Research Report
マウス瞬目反射条件付けを用いた運動学習シナプス基盤の解明
Project/Area Number |
20790084
|
Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
岸本 泰司 Tokushima Bunri University, 香川薬学部, 助教 (90441592)
|
Keywords | 運動学習 / 記憶・学習 / 瞬目反射条件付け / 内在性カンナビノイド / 消去 / EVA樹脂 / 代謝型グルタミン酸受容体 / 2-AG |
Research Abstract |
当該年度においては、運動学習としての瞬目反射条件付けの様々なパラダイム(遅延課題、痕跡課題、前抑制効果)における記憶の成立と発現の分子メカニズムを明らかにすることを主要な目的として、分子・シナプス・行動の各層にわたる実験を行い、既存神経回路モデルの検証をも行った(Kishimoto, 2010)。特に内在性カンナビノイド受容体シグナリングの記憶形成における役割に関しては、以下2点の大きな進展を得た。 i) 内在性カンナビノイドの候補物質である2-AGの分解酵素(モノアシルグリセロールリパーゼ)や合成酵素(ジアシルグリセロール)を薬理的、および遺伝子的に阻害した時に、瞬目反射条件付け遅延課題の獲得あるいは消去に顕著な変化が現れることを明らかにした。また、小脳プルキンエ細胞特異的に2-AGを欠失させたマウスでは遅延課題における条件反射獲得に異常が見られた。これらは瞬目反射条件付けの記憶獲得に関わる内在性カンナビノイドシグナリングの少なくともその一部を、2-AGが担っていることを示唆するものとなった。 ii) EVA樹脂(ethylene-vinyl acetate copolymer)を用いて、学習実験中に、薬物を小脳皮質特異的かつ持続的に投与する方法を開発した。この方法を用いて、内在性カンナビノイドのもう一つの候補物質であるアナンダミドの小脳学習における寄与を検討した。アナンダミドの分解酵素(fatty acid amide hydrolase ; FAAH)の阻害薬であるURB597を含有させたEVA樹脂を小脳皮質に被せて持続投与したところ、瞬目反射条件付けは有意に更新することが示された。またこの効果はCB1受容体の拮抗薬であるAM251によって阻害された。これらの結果は、瞬目反射条件付けの記憶獲得にアナンダミドも関与しうることを示すものであり興味深いものとなった。
|