2009 Fiscal Year Annual Research Report
ダウン症マウスモデルの脳における神経伝達物質の包括的解析と新規治療標的分子の同定
Project/Area Number |
20790089
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
石原 慶一 Kyoto Pharmaceutical University, 薬学部, 助教 (80340446)
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Keywords | ダウン症候群 / 神経伝達物質 / マウスモデル |
Research Abstract |
ダウン症候群(DS)は精神遅滞を呈する発症頻度の高い染色体異常症であるが,精神遅滞の病態メカニズムは不明である.本課題では,脳内神経伝達物質のアンバランスがDSの精神遅滞に重要である可能性を考え,DSモデル動物であるTs1Cjeマウスの腹側前脳部,線条体および海馬における20種類の神経伝達物質量を測定し評価した.前年度までに,Ts1Cjeマウスにおける(1)線条体におけるドパミンおよびセロトニン濃度の増加傾向とそれらの代謝異常,(2)腹側前脳部および海馬におけるセロトニンおよびノルエピネフリン濃度の増加とそれらの代謝系異常,および(3)遊離チロシンおよびフェニルアラニン量の蓄積増加といった異常を検出した.本年度は,Ts1Cjeマウスのドパミン代謝異常に着目することで,間接的ドパミンアゴニストであるメタンフェタミン(METH)を投与し,神経伝達物質濃度およびその行動異常に及ぼす影響について解析した.METH投与による運動量の増加は,Ts1Cjeマウスと野生型マウスで同程度であったが,Ts1Cjeマウス脳での幾つかの神経伝達物質量の異常はMETH投与によって改善された.また,生体モノアミン代謝酵素であるCatechol O-methyl transferase(COMT)の発現がTs1Cjeマウスの脳で高かったことから,これがTs1Cjeマウスにおける神経伝達物質量の異常の原因の一つである可能性が考えられた.また,今回の解析中に,新たなTs1Cjeマウスの異常表現型として脳室拡大や脂質過酸化亢進も見いだした.これらの結果は,DSモデルマウスの異常として全く新しい知見であり,かつDS病態解明への重要な手がかりであると共に,COMTが今後DSの新規治療標的となりうる可能性を示唆している.
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