Research Abstract |
本研究は, 慢性閉塞性肺疾患に対して有効かつ安全な治療法開発を目指すものであり, すなわち, 強力な抗炎症ならびに抗アポトーシス活性を有する新規機能性ペプチドを開発し, それを粉末吸入製剤として応用することで新規メカニズムの治療薬創製に寄与しようとするものである. 1)COPDモデル動物の構築ならびに血中バイオマーカーの探索 Ovalbumin(OVA)をジェットミルによって粉砕し, 分級済エリスリトールキャリアー(平均粒径50μm)と混和することでOVA粉末製剤を得た. 本品をOVA感作ラットに気道内投与することによって, 著しい気道炎症を誘発し, 好酸球・好中球の肺浸潤を認めた. さらに, 血中バイオマーカーの精査を行ったところ, 特にミエロペルオキシダーゼ, エオジノフィルペルオキシダーゼがOVA投与後に変動し, さらに乳酸デヒドロゲナーゼが同様の推移を示したことから, 炎症に伴う組織障害を強く示唆した. 本検討よりOVA粉末吸入製剤を利用したCOPDモデル動物と, さらには薬効評価に利用可能なバイオマーカーを提示できた. 2)VIP受容体アゴニストの開発 種々構造活性相関研究によって見いだされた新規VIP誘導体数種はVIPと比して非常に高い化学的安定性を示し, またVIPと同程度の受容体結合活性が認められた. 肺胞由来L2細胞を用いたin vitro試験ではCOPDの原因となるタバコ煙抽出液による細胞障害を有意に抑制し, そのメカニズムはcaspase-3とMMPの抑制が関与していることを明らかにした. 今回得られたこれら基礎的情報を基に, 現在, 新規VIP誘導体吸入製剤の設計・評価を行っている.
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