2008 Fiscal Year Annual Research Report
メチル水銀による中枢神経障害の発現機構の解明に向けた,細胞外環境分子の解析
Project/Area Number |
20790115
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Research Institution | Hokuriku University |
Principal Investigator |
周尾 卓也 Hokuriku University, 薬学部, 助教 (90399006)
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Keywords | プロテオグリカン / メタロプロテアーゼ / メチル水銀 / 神経細胞周囲網 / 神経細胞毒性 / 水俣病 |
Research Abstract |
水俣病の発症が確認されてから40年以上が経過した現在においても、水俣病の原因物質であるメチル水銀がどのような分子機構で脳・中枢神経系に特異的な影響を与えるかは明らかになっていない。世界的にはメチル水銀による環境汚染が大きな社会問題となっている地域もある。このような背景から、メチル水銀の脳・中枢神経障害に関する基礎研究の発展が求められている。これまでメチル水銀の毒性に関する研究は, いずれも細胞内の事象を対象として行われてきた. しかし, メチル水銀毒性の重要な特徴である中枢神経系への特異性, および胎児への特異性を説明する分子機構は明らかになっていない. 本研究の目的は, 脳・中枢神経系の細胞外環境を構成する要素, 細胞外基質分子とタンパク質分解酵素の動態を解析することで, メチル水銀による脳・中枢神経障害の発現機構の解明へ向け糸口を得ることである. 本年度に実施した研究から, メチル水銀がタンパク質分解酵素の分泌型メタロプロテアーゼproMMP-2を直接に活性化すること, およびメチル水銀により活性化されたMMP-2が実際に脳組織から精製したプロテオグリカン群(脳組織における主要な細胞外基質分子)を分解しうることを明らかにした. また, 比較的低濃度のメチル水銀を神経細胞の初代培養系に添加すると, 神経細胞同士の接着が異常となることを見出した. 今後は, メチル水銀が標的分子メタロプロテアーゼと細胞外環境分子プロテオグリカンとの相互作用に及ぼす影響を細胞レベルおよび動物レベルで解析し, 研究成果の治療への応用について検討する予定である.
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