2008 Fiscal Year Annual Research Report
新規ペプチド性志賀毒素阻害薬の生体内作用機構の解明
Project/Area Number |
20790118
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
高橋 美帆 Doshisha University, 生命医科学部, 助教 (00446569)
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Keywords | 感染症 |
Research Abstract |
これまでに我々は、マウスの0157感染実験において、独自に開発したペプチド性Stx阻害剤PPP- tetを経口投与した場合にPPP-tetが極めて強い治癒効果を示すことを見出している。本研究ではPPP-tetの個体レベルでの作用部位並びにその作用機構を明らかにすることを目的とする。 本年度は、ウサギ腸管ループにおけるPPP-tetのStx毒性阻害効果の検討と、腸管ループ内PPP-tetとStxの局在の検討を行った。 まず腸管ループにおけるStx毒性の影響を検討したところ、各ループの長さが10cm、Stx2が10μgの場合に顕著な腸管障害が観察された。そこで以降の検討は本条件下で行った。次に腸管ループにおけるPPP-tetのStx阻害効果を検討した。その結果PPP-tet 10mg投与群では、Stx2毒性による腸管障害が全く見られなかった。このことから、PPP-tetは個体腸管内においてもStx2毒性阻害効果を示すことが明らかとなった。 次に、Biotin化PPP-tetとStx2の腸管内の局在について検討した。まず腸管ループにおけるBiotin-PPP-tetのStx2阻害効果を検討した。その結果、Biotin-PPP-tet 10mg投与群においてStx2毒性による腸管障害が阻害された。このことからBiotin-PPP-tetはPPP-tetと同等のStx2阻害効果があることが示された。次に、Biotin-PPP-tetのStx2阻害効果が確認された腸管ループの一部から組織切片を作成し、Stx2とBiotin-PPP-tetの腸管組織内の局在を観察した。その結果、Biotin-PPP-tet単独でも細胞内に局在すること、Stx2とBiotin-PPP-tet投与群では、Biotin-PPP-tetの細胞内への取り込み量がBiotin-PPP-tet単独に比べ明らかに増加することが明らかとなった。次に摘出腸管片を用い、腸管片に直接Stx2とBiotin-PPP-tetを添加し、両者の局在を観察した。その結果、Stx2とBiotin-PPP-tetは細胞内で共局在していることが示された。これらのことから、個体レベルではPPP-tetの作用部位は腸管細胞内であること、細胞内でBiotin-PPP-tetはStx2と結合していること、その結果Stx2による腸管障害が抑制されていることが明らかとなった。 この知見は、PPP-tetの感染実験での強力な治癒効果の発揮メカニズムの全容を明らかにするために非常に重要な情報となる。
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