2009 Fiscal Year Annual Research Report
尿細管セグメントの網羅的遺伝子発現解析によるシスプラチン腎症規定因子の同定
Project/Area Number |
20790133
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
米澤 淳 Kyoto University, 医学研究科, 助教 (90452341)
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Keywords | 薬学 / 毒性学 / マイクロアレイ / トランスポータ / 腎臓 / シスプラチン |
Research Abstract |
腎臓はヘテロな細胞集団で構成される臓器であり、毒性発現機構を解明する上で問題となる。本研究では、シスプラチン腎症の起点部位である近位尿細管を単離して遺伝子発現変化を検討することで、腎毒性発現過程における起点部位からの細胞間情報伝達機構解明を目的とした。研究計画最終年度である平成21年度には、2mg/kgシスプラチンを投与した尿細管障害モデルおよび10mg/kgシスプラチンを投与したGFR低下モデルにおいて、単離尿細管のマイクロアレイ解析を行った。その結果、尿細管においてシスプラチンによるケモカイン類の特徴的な発現上昇が認められ、当研究室で以前に行った慢性腎不全モデルとは遺伝子発現プロファイルが大きく異なることが判明した。また、臨床的シスプラチン腎症モデルである5mg/kgシスプラチン投与ラットにおいて、腎障害の進行に対応した経日的な各種ケモカイン類の発現上昇が認められた。以上より、シスプラチン腎症においてケモカイン類が尿細管上皮細胞由来の炎症因子である可能性が示された。 また、ヒトにおいてメトホルミンの排泄能を指標として、尿細管機能を評価した。その結果、メトホルミンの分泌はクレアチニンクリアランスと良好な相関が認められた。一方、有機カチオン輸送系OCT2、MATE1、MATE2-Kのヘテロの変異や他の臨床検査値との関連は観察されなかった。しかし、本症例では腎障害患者は含まれていない。このことから、少なくとも腎機能が比較的よい状態の患者群では、クレアチニンクリアランスがカチオン性薬物の尿細管分泌能の指標になると考えられる。
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Research Products
(4 results)