2009 Fiscal Year Annual Research Report
トランスフェリンレセプター発現リズムを指標とする新規時間薬物送達システムの構築
Project/Area Number |
20790137
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松永 直哉 Kyushu University, 薬学研究院, 助教 (10432915)
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Keywords | 時間治療 / DDS |
Research Abstract |
種々の生体機能や疾患症状には日周リズムが存在し,その分子機構が明らかとされてきている.また,薬物の効果・副作用は投薬時刻により変化する.これら研究成果により、投薬時刻を加味した治療、時間治療がさまざまな疾患で実施されている。しかし抗腫瘍薬に関しては実用化に及んでいない。その理由として、抗腫瘍薬の至適投薬タイミングを設定するためのリズムマーカーの同定および選択と、そのマーカーを指標に投薬する薬剤の種類に限りがあることが考えられる。我々は、癌細胞で著しく発現が亢進するトランスフェリンレセプター(TfR)の発現に、日周リズムが存在することを発見し、癌時間治療のリズムマーカーとして利用可能な所見を得た。そこで本研究では、癌細胞に発現するTfRをリズムマーカーとして用い、そのリズムに合わせトランスフェリンリポソーム化製剤を投薬し、効率的に癌細胞に送達させる。これら一連の、リズム診断→至適投薬タイミングの設定→薬物投与・癌細胞への薬物送達といった時間薬物送達システムの構築を目指している。 平成20年度では、トランスフェリンリポソーム化オキサリプラチン(Tf-OHP)の抗腫瘍効果におよぼす投薬タイミングの検討をした。Colon26を移植したBALB/cマウスを対象に、抗腫瘍効果を指標としてTf-OHP投薬時刻の影響を検討した結果。9:00比較し21:00投与群において有意に抗腫瘍効果が増強した。Colon26を移植したBALB/cマウスを対象に、9:00または21:00にTf-OHPを投与し血液中および腫瘍内Pt量を測定した結果、9:00比較し21:00投与群において腫瘍ないPt量が有意に増化した。平成21年度では、TfR発現リズム解析を行い、TfRのリズムマーカーとしての有用性を検証した。その結果、TfR発現リズムはcMycにより制御され、それらをマーカーとし抗腫瘍効果を増強可能であることを明らかとした。本研究より、リボソーム製剤が投薬時刻を変えることで効果を増強できることを初めて立証した。また、新規のDDS開発に有用なストラテジーの構築に至った。
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