2008 Fiscal Year Annual Research Report
腎不全患者における薬物体内動態擾乱因子の探索と薬物適正使用法の確立
Project/Area Number |
20790151
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
辻本 雅之 Kyoto Pharmaceutical University, 薬学部, 助教 (90372739)
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Keywords | 透析患者 / 腎外クリアランス / 尿毒症物質 / 薬物代謝酵素 / トランスポーター / プラバスタチン / ロサルタン |
Research Abstract |
本邦において急増している透析患者においては、薬物の腎排泄能の顕著な低下が問題点として指摘されてきた。これに加えて、肝や消化管など、腎以外の臓器からの排泄能(腎外クリアランス)も低下している事が、高脂血症治療薬プラバスタチン(PRV)や高血圧治療薬ロサルタン(LOS)などで報告されている。このような腎外クリアランスの低下は、透析患者における薬物適正使用をますます困難にするにも関わらず、その原因は明らかにされていない。そこで本研究では、透析患者におけるPRVやLOSの腎外クリアランスの低下原因を明らかにする目的で、消化管や肝臓におけるPRV輸送機構やLOS代謝機構に及ぼす透析患者血清または透析患者血清中に蓄積している成分(尿毒症物質)の影響について検討を加えた。10%透析患者血清で前処置したCaco-2細胞(消化管上皮モデル細胞)においてPRVの細胞内蓄積は有意に増大し、その分泌に関与しているMRP2 mRNA発現量は有意に低下した。また、いくつかの尿毒症物質によってもMRP2 mRNA発現量はそれぞれ低下傾向を示した。さらに、透析患者血清で前処置したHep3B細胞(肝モデル細胞)においてPRVの初期取り込み速度は有意に低下し、その取り込みに関与しているOATP1B1 mRNA発現量は有意に低下した。一方で、ヒト肝ミクロソームによるLOS代謝は、10%透析患者の存在により有意に低下し、その低下は、尿毒症物質のインドキシル硫酸及びパラクレゾールによって説明可能であった。以上の研究成果より、透析患者におけるPRVの腎外クリアランスの低下は、透析患者で蓄積している尿毒症物質による消化管MRP2及び肝OATP1B1の発現抑制に一部起因すること、LOSの腎外クリアランスの低下は、インドキシル硫酸及びパラクレゾールの蓄積による肝代謝の低下に一部起因することが示唆された
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