2009 Fiscal Year Annual Research Report
腎不全患者における薬物体内動態擾乱因子の探索と薬物適正使用法の確立
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20790151
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
辻本 雅之 Kyoto Pharmaceutical University, 薬学部, 助教 (90372739)
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Keywords | 腎不全患者(透析患者) / 腎外クリアランス / 尿毒症物質 / 薬物代謝酵素 / トランスポーター |
Research Abstract |
研究代表者は、昨年、末期腎不全患者における高血圧治療薬ロサルタンなどの腎外排泄能低下機序について明らかにした。よって、腎不全患者では、薬物の腎排泄能だけでなく、腎外排泄能も変動していることが明らかになった。 この結果は同時に、末期腎不全患者において単に薬物の体内動態が変化するだけでなく、薬物相互作用も変化する可能性を示している。そこで本年度は、末期腎不全患者のみで報告されている『抗アレルギー薬フェキソフェナジン(FEX)による心不全治療薬ジゴキシン(DX)血中濃度の劇的な低下』機序の解明を目指した。なお、本研究では、DXの腎外排泄経路として、消化管吸収過程及び肝取り込み過程に着目した。消化管培養細胞及び肝培養細胞のいずれにおいても、FEX又は腎不全患者血清(US)単独処置は、DX輸送に影響しなかったのに対して、FEX及びUSの共存(FEX+US)は、DXの取り込み量を有意に低下させた。よって、本症例のDX血中濃度低下は、FEXとUSとの協同作用によるDX消化管取り込み能の低下に起因する可能性が示唆された。また、US中に高濃度で蓄積している尿毒症物質であるフラン環化合物CMPFやインドキシル硫酸は、USと同様にFEX共存時のみ、DXの消化管取り込みを有意に抑制した。以上のことから、末期腎不全患者におけるFEXによるDX血中濃度低下は、FEXとCMPF及びインドキシル硫酸との協同作用によるDXの消化管取り込み能低下に起因することが示唆された。よって、末期腎不全患者に対しては、インドキシル硫酸などの尿毒症物質による薬物体内動態の変動に注意するだけでなく、腎機能正常者とは異なる薬物相互作用にも注意が必要であると考えられた。
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