2008 Fiscal Year Annual Research Report
ニワトリ胚、マウス胚を用いた尾部退行症候群(人魚病)発症分子メカニズムの解明
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20790163
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
鈴木 堅太郎 Kumamoto University, 発生医学研究センター, COEリサーチアソシエイト (20404345)
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Keywords | 尾部退行症候群 / 泌尿生殖器 / 先天異常学 |
Research Abstract |
尾部退行症候群(人魚病)は外生殖器、後肢を含む後方体幹部に見られる形態異常の総称で、軽微な尾椎の欠失から左右の後肢が癒着してしまう重篤なものまで様々である。現在のところ、その発症メカニズムをはじめ後方体幹部の発生メカニズムでさえほとんどわかっていない。原腸陥入後期にBmpのアンタゴニストであるNogginを過剰発現させたニワトリ胚は、後肢が癒合してしまう尾部退行症候群様の形態異常を示すことがわかった。この結果は、原腸陥入の停止にBmp遺伝子が関与しており同シグナルの破綻が後方体幹部の発生異常に関与していることを想起させるものである。本研究の目的は、尾部退行症候群の発症メカニズムさらに後方体幹部の発生メカニズムをニワトリ胚、マウス胚を用いて細胞系譜、分子レベルの両局面から理解することである。 泌尿生殖器系および後肢形成に寄与する細胞系譜を調べるため、ニワトリ胚を用いたDiIラベル実験を行なった。その結果、泌尿生殖器形成予定領域の同定、さらに後肢形成予定領域が泌尿生殖器形成予定領域に極めて近接した場所に存在している可能性がわかった。 後肢の前駆細胞にcreを特異的に発現させることができるIsl1-creを用いてBmp遺伝子群の1つであるBmp4遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスを作成したところ、後肢の融合をはじめ尾部退行症候群様の形態異常を示すことがわかった。後肢前駆細胞を特異的に単離し、マイクロアレー法を用いて、遺伝子発現に変化を示す分子を網羅的に調べるため、creの活性依存的に蛍光色素(YFP)を発光するIsl1-cre Bmp4^<flox/flox>ROSA26Sor^<tm(EYFP)Cos/J>マウスを作成した。 本年度の結果は、四肢と泌尿生殖器は互いに協調して形成されている可能性を示唆しており、Isl1-cre Bmp4^<flox/flox>ROSA26Sor^<tm(EYFP)Cos/J>マウスを用いることにより、後方体幹部の発生過程におけるBmpシグナルの重要性さらに同シグナルを中心とした分子メカニズムの一端が解明できることが期待できる。
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