2009 Fiscal Year Annual Research Report
神経因性疼痛における新規細胞間接着因子CHL1の役割
Project/Area Number |
20790170
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Research Institution | Hyogo College of Medicine |
Principal Investigator |
山中 博樹 Hyogo College of Medicine, 医学部, 講師 (20340995)
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Keywords | 神経因性疼痛 / 細胞間接着 / 脊髄後角 / シナプス / 形態変化 |
Research Abstract |
当該年度においては、末梢神経障害後のCHL1タンパクの挙動を微細構造レベルにおいて追求するに、多くを費やした。その結果、前年度までに明らかにした、神経障害後の疼痛行動と関連する微細構造上のCHL1タンパクの局在変化が明らかになった。 CHL1タンパクは神経障害後の後根神経節において発現増加し、脊髄後角に運ばれる事をこれまでに明らかにした。このCHL1タンパクの集積は顆粒状の陽性を呈し、シナプスではない構造に集積する事を二重染色にて明らかにした。この構造の正体を解明するために免疫組織化学を電子顕微鏡において観察した。様々な条件検討の結果、特異的にCHL1陽性を検出する事に成功し、その陽性は 1)軸索間の接着。2)シナプス構造を伴わない神経終末と樹状突起の間。3)軸索とグリア細胞、特にマイクログリアとの間の接触面において見られる事がわかった。 前年度までに明らかにした、CHL1抗体の投与による疼痛行動の抑制にはこれらの脊髄後角での感覚神経軸索と固有ニューロン、またはグリア細胞の接着にCHL1が関与していることが示唆される。 前年度までの結果と併せて、当初の計画を超えた成果を収めることができた。 現有の結果を元に現在Journal of Comparative neurology誌に投稿し、現在Reviseの作成中である。 当該年度において明らかとしたことは、末梢神経障害後の感覚神経終末においてCHL1が集積している構造についてである。末梢神経損傷後に後根神経節ニューロンにおいてCHL1の発現上昇と、その脊髄後角での集積、接着因子であるCHL1の阻害目的のための細胞外ドメイン抗体投与による著明な疼痛行動の抑制が昨年度までに明らかにした結果である。しかし、この阻害効果がどこで行われているかが不明であった。微細構造状のCHL1が「何と接着しているか」という点はCHL1を介したシグナルの伝達の経路を明らかとする上で重要な点である。免疫組織化学を電子顕微鏡下でCHL1の集積を検討した結果、1)グリアと軸索の接着面、2)シナプス構造を伴わない感覚神経終末と固有ニューロンの間、3)無髄の軸索間においてCHL1の集積が見られた。 これらの結果は既存のシナプス以外の接着が感覚神経と脊髄の細胞の間に形成され、その構造にCHL1が関与していることを示唆している。グリア細胞の活性化や、脊髄後角のニューロンの過剰興奮が神経因性疼痛に関与しているという昨今の多くの報告と併せて、本研究の意義は単なる可溶成分の分泌・受容のみではなく新たな接着構造の形成が新家会陰性疼痛の病態の一部であることを明らかにした点である。
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Research Products
(5 results)