2009 Fiscal Year Annual Research Report
カメの比較発生解剖学から分かること ~肩帯、胸部形態を中心に~
Project/Area Number |
20790172
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
長島 寛 The Institute of Physical and Chemical Research, 形態進化研究グループ, 研究員 (40435665)
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Keywords | 比較発生解剖学 / スッポン / ニワトリ / 肩帯 / 進化的新形成物 / 進化発生学 / ハツカネズミ / 相同性 |
Research Abstract |
動物種に特異的な形態がどのように形成されてくるのかを明らかにするため、動物種によって形態が大きく異なる、ほ乳類、鳥類、カメ類の肩帯の発生を比較した。ハツカネズミ、ニワトリ、スッポンの初期胚で、Sox9の発現を用いて軟骨初期凝集塊の形態を調べたところ、いずれの動物でも前方突起、後方突起から成っていたが、ハツカネズミにだけこれらに加えて、前方背側突起の形成が見られた。後方突起からはどの動物でも肩甲骨本体が形成された。前方突起からは、ハッカネズミ、ニワトリでは、比較解剖学的に肩峰と名付けられた肩甲骨の突起が形成された。カメでも前方突起から肩帯の突起が作られたが、この構造が他の動物における肩峰と相同であるのかどうかを確かめるため、隣接切片において、Pax1の発現を調べた所、三者の動物で前方突起とその周囲の間葉にその発現が見られた。またスッポンにおいては、前方突起と烏口骨の間を烏口上神経が肩帯の内側から外側に向けて通過し、肩帯外側にある烏口上筋を支配していた。これらの相対的位置関係は他の動物においても同様であった。従って、カメにおいては他の動物の肩峰と相同な構造を拡大することによって、カメ類に特異的な三放射型の肩帯を作っていたことが分かった。またハッカネズミに特異的な前方背側突起からは、棘上窩が形成された。棘上窩は他の羊膜類には見られない構造であり、化石証拠からは、ほ乳類の進化とともに徐々に肩甲骨で拡大した進化的に新しい構造であると考えられてきた一方で、有袋類の発生研究からはそれを否定する見解も出されてきた。本研究の結果は棘上窩がほ乳類特異的な進化的新構造物であることを支持していた。
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Research Products
(3 results)