2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20790182
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
河尾 直之 Kinki University, 医学部, 助教 (70388510)
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Keywords | 肝再生 / シグナル伝達 / t-PA |
Research Abstract |
プラスミノゲンアクチベーター(PA)/プラスミン系は肝臓の組織再生・再構築における中心的な役割を果たしているが、組織性PA(t-PA)に焦点をあてた研究は未だほとんどない。本研究課題では肝再生過程におけるt-PAの新たな役割を解明すること、を目的とする。 1. t-PAによる細胞内シグナル経路活性化に関する研究 : マウス初代培養肝細胞において、t-PAは濃度依存的にERK1/2のリン酸化を誘起した。さらにインヒビターを用いた阻害実験の結果から、t-PAはリジン結合部位を介して肝細胞に結合し、自身のプロテアーゼ活性依存性にERK1/2経路を活性化する可能性が示唆された。 2. t-PAの肝細胞増殖促進作用に関する研究 : マウス初代培養肝細胞において、t-PAは肝細胞の増殖能を有意に亢進礼、この効果はt-PAの酵素活性阻害薬によって消失した。また、PAインヒビターであるPAI-1の遺伝子欠損マウス由来初代培養肝細胞は、野生型マウス由来肝細胞と比較して増殖能が高く、その培養液中にはt-PAが大量に存在すること、さらに、t-PAの活性阻害薬によって増殖が抑制されることを見出した。 3. 新規な肝傷害モデルの確立 : 光化学反応によって局所的な肝細胞傷害を誘起する新規な肝傷害モデルを確立した。本肝傷害モデルでは、これまで非常に困難であった傷害部位の修復過程を定量的に評価することが可能になり、肝修復過程におけるt-PAの新たな役割を解明するために有用なモデルであると考えられる。 以上より、t-PAは肝細胞に結合しプロテアーゼ活性依存性に細胞シグナルを誘起し、さちに肝細胞の増殖能を亢進する可能性が示唆された。来年度は新規に確立した肝傷害モデルや既存の肝障害モデルを用いて、肝再生過程におけるt-PAの関与をt-PA遺伝子欠損マウスを用いて検討する予定である。
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