2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20790182
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
河尾 直之 Kinki University, 医学部, 助教 (70388510)
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Keywords | t-PA / 肝再生 / 細胞内シグナル / プラスミノゲン |
Research Abstract |
プラスミノゲンアクチベーター(PA)/プラスミン系は肝臓の組織再生・再構築における中心的な役割を果たしているが、組織性PA(t-PA)に焦点をあてた研究は未だほとんどない。我々はこれまでに、t-PAが肝細胞に結合しプロテアーゼ活性依存性に細胞シグナルを誘起して、肝細胞の増殖能を亢進する可能性を見出している。本年度は、肝再生過程におけるt-PA/プラスミン系の新しい役割についてt-PA遺伝子欠損マウスおよびプラスミノゲン遺伝欠損マウスを用いて検討した。 肝障害後の修復過程において、野生型マウスでは障害部位周囲にマクロファージの集積が観察された。さらに、障害部位周囲にはマクロファージのケモアトラクタントであるMCP-1を発現した好中球の集積が認められ、マクロファージの集積はMCP-1の中和抗体によって抑制された。また、障害部位周囲では肝細胞の増殖、血管新生および活性化型星細胞集積に伴う膠原線維の蓄積が認められた。一方、プラスミノゲン遺伝子欠損マウスではこれらすべての修復反応が認められなかった。しかしながら、t-PA遺伝子欠損マウスでは肝臓の修復および肝細胞の増殖に変化は見られなかった。 以上より、プラスミンは肝障害後に惹起される修復反応に必須の分子であることが明らかになった。さらにプラスミンはマクロファージの集積に伴って引き起こされる肝細胞の増殖、活性化型星細胞の集積や血管新生などの修復反応においても重要な役割を果たしていることが明らかになった。これまで、t-PA遺伝子欠損マウスを用いた検討では計画通りの結果が得られていない。しかしながら、昨年度の研究成果と肝再生過程におけるプラスミンの多様な役割を合わせ考えると、t-PAは肝細胞増殖以外の修復反応に関わる可能性が未だ残っており、今後、さらに詳細な検討が必要である。
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